小説 【会津のエロ家老 西郷頼母】 2 藩主容保との激突
翌日。
城中は一転、勇ましさに満ちていた。
「幕府を守る」「会津の覚悟を天下に示す」
そんな言葉が、酒の匂いとともに飛び交う。
頼母は、それらを冷ややかに見渡し、同輩や家臣にこう言って回った。
「この戦 勝ち目はない。会津が矢面に立てば、滅びは早まるだけだ」
その声は、やがて藩主・容保の耳に届いた。
——評定所。
張りつめた沈黙の中、容保の声が落ちた。
「西郷。そなたは、将軍家の御恩を何と心得る」
頼母は一礼し、ゆっくりと顔を上げた。その目に、怯えはなかった。
「心得ております。ゆえにこそ、申し上げておる」
「戯言を」
「な、なんだとお!」容保は扇を強く畳に打ちつけた。
「われら会津はな、先代よりの家訓がある。一朝事あれば、幕府を守り奉る。それが、会津の会津たる所以だ」
その言葉が、広間を満たした。
重臣たちは深く頷き、誇りと使命に顔を紅潮させる。
だが頼母は、一歩踏み出した。
「その家訓、誰のためのものでございましょう」
「何?」
「幕府のためか。将軍家のためか。
それとも——会津そのもののためか」
ざわめく・・
「家訓とは、生き残るためにあるものにございます」
頼母は続けた。「死に場所を定めるためのものではない」
「不忠を申すか!」
「忠義を、使い捨てにすることこそ不忠にござる」
容保の顔が怒りに歪む。
「京はすでに、力で抑えられる地ではありませぬ。会津が出れば、家訓は守られましょう。だが——藩は滅びます」
「こざかしいぞ 頼母! それでも行く、それが会津だ」
容保は言い切った。
「……ならば」
頼母は、深く一礼した。 「それ以上、申し上げることはございませぬ。 ただ、後に残る者のことを思う者もいた——
そう、記していただければ、それで」
その静かな言葉が、かえって容保の怒りに油を注いだ。
「西郷頼母。家老職を解く。自宅謹慎を命ずる」
裁きは即断だった。 頼母は何も言わず、踵を返した。
背中に浴びせられる視線の中で、これこそ 頼母が待っていた言葉だったのだ
自宅謹慎になったところで 禄が減るわけでなし 時の余裕ができるのだ
(これでよい)
頼母は、胸の内でそう呟やき 策謀が動き出した。
つづく
コメント
1/31 11:48
1. 踵、懐かしい!
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