小説 【会津のエロ家老 西郷頼母】 3    この世の極楽
30代前半  大阪府
1/31 12:14
小説 【会津のエロ家老 西郷頼母】 3    この世の極楽
頼母は、沙織と激しいまでの交尾したあと、ひとり庭に出た。
空には、雲一つない満月が浮かんでいる。
なんという爽快な余韻だろう・・
沙織の壺の収縮はどんな快楽にも優りこの世の極楽とはこれ然りだと思った

夜気は澄み、砂利を踏む音だけが、やけに大きく耳に残った。
松の影が庭に落ち、その黒はまるで別の世界への境のように見える。

——人間とは、なんぞや。
——武士とは、なんぞや。
——この世を生きるとは……。

幼き日に叩き込まれた言葉が、次々と脳裏をよぎる。
忠義。名誉。家名。死に様。

だが、それらはすべて、生き残った者の口から語られる言葉にすぎぬ。
死んだ者は、何一つ語れぬ。 頼母は、月を仰いだまま、微かに口元を歪めた。

(武士とは、死ぬ覚悟を誇る者ではない)
(生きて、選び続ける覚悟を持つ者だ)

この世は、正しさでできてはいない。 勝者の論理と、敗者の屍で積み上がっている。

ならば——。
(わしは、この世の極楽を生きる)

生きて、生きて、生き抜く。滅びゆく者たちの上を踏み越え、恨まれ、罵られ、裏切り者と呼ばれようとも。

(生きるだけ生きたい)
(そして——)

頼母は、胸の奥で、はっきりと言葉にした。
(この世の極楽を、味わいたいのだ)

それは仏の説く極楽ではない。温かな酒を喉に流し、女の体温を感じ、
朝日をもう一度見るという、生の極楽だった。

潔く死ぬなど、美談にすぎぬ。死は一瞬。生は、果てがない。

頼母は、月に背を向けた。
もう、迷いはなかった。

明日からは、さらに深く、さらに広く、網を張る。人を使い、金を動かし、情も罪も抱え込む。

武士である前に、人間であることを選んだ——ただ、それだけのことだ。

満月は、何も答えず、ただ静かに、会津の闇を照らしていた。

つづく
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