半グレ銀行マンの野望
立夫は病院のエントランスをくぐり、受付を素通りしてそのまま整形外科の待合室へ直行した
待合室は患者で混み合っていたが、立夫は壁際に立ち、スタッフの動きを観察した。
看護師たちが忙しなく行き交う中、一人の女性が目に入った。
白衣を着て、カルテの束を抱え、書類ホルダーを片手に廊下を歩いている。
丸い顔、伏し目がちの目、陰気な印象——間違いない、海棠ますみだ。
スタイルは白衣越しでもわかるほど良かったが、表情は疲れと影が混じり、どこか近寄りがたい。
立夫は深呼吸して、彼女に近づいた。
患者のいないタイミングを見計らい、声を掛けた。
「すみません、海棠ますみさん、ですよね?」
ますみは足を止め、振り返った。
目が少し細くなり、警戒の色が浮かぶ。
「…はい、そうですけど。患者さんですか?」
立夫は軽く頭を下げ、すぐに本題に入った。
唐突すぎるかもしれないが、遠回しは逆効果だと思った。
「いえ、患者じゃないです。いきなりで本当に失礼なんですが……僕はあなたに関心があるんです」
ますみは一瞬、目を丸くした。
周囲の視線が気になったのか、書類を抱え直して小さく後ずさった。
「…え? あの、どういう……?」
立夫は頭を掻きながら、照れたふりをして続けた。
本心を少しだけ混ぜて、素直に聞こえるように。
「いえね……あなたみたいな人が、僕のタイプなんで。
知っている女優さんに似てるというか 見えて、でも目が優しいし、仕事真面目そうだし……
なんか、放っておけないっていうか。
「病院に来て、待合でチラッと見かけただけなのに、気になって仕方なくて。
だから、声かけちゃいました。変ですよね、すみません」
ますみは黙って立夫を見ていた。
丸顔がわずかに赤くなり、伏せていた目が少しだけ上がった。
「…そんなこと、急に言われても……困ります」
声は小さかったが、拒絶というより戸惑いが強い。
立夫は慌てて手を振った。
「わかってます、急すぎるし、失礼極まりないですよね。
でも、せめて名前だけでも覚えてもらえれば……
いや、連絡先とかじゃなくていいです。ただ、もしよかったら、仕事終わりに少しお茶でもどうかなって思って」
ますみは唇を軽く噛み、廊下の奥をちらりと見た。
シフトの合間らしく、すぐに戻らなければならない様子だった。
「…今は仕事中なので、話せないんですけど」
「じゃあ、今日の仕事終わりに。
病院の正門近くで待ってます。来られなかったら、それで諦めます。本当に」
立夫はそう言って、深く頭を下げた。
ますみは数秒沈黙した後、
「…わかりました。19時頃に上がるので、そこで」
小さく頷いて、書類を抱えたまま去っていった。
背中が少し震えているように見えたのは、緊張か、それとも……。
立夫は待合室のベンチに座り、拳を握りしめた。(やったぜ!)
つづく
※ もう一人の銀行マンを書いてみた エロ度、極めつけにしています(^.^)
コメント
2/3 20:22
2. 海堂って、聞いたことある苗字だな~。
返コメ
2/3 19:26
1. なるほどね。
新たな、立夫さんが見れるんですね。
(。'-')(。,_,)ウンウン
笑
返コメ