【冥土からのラブレター  新婚2か月で失った妻】   出会い
30代前半  大阪府
2/6 6:41
【冥土からのラブレター  新婚2か月で失った妻】   出会い
 その会社を訪ねたのは、ただの業務だった。
 立夫にとっては、数ある取引先のひとつに過ぎない。受付フロアに足を踏み入れ、名刺入れを確かめながらカウンターに近づいた、その瞬間までは。

「いらっしゃいませ」

 顔を上げた女性と視線が合い、立夫は一拍、言葉を失った。
 整いすぎない顔立ち。派手ではないが、清潔で、静かな光を帯びている。受付という場所に似合う丁寧さの中に、不思議な温度があった。

「総務部の、○○さんをお訪ねしてまして」

 名刺を差し出すと、女性は両手で受け取り、きちんと目を落とした。

「少々お待ちください」

 名札には、光知子とあった。
 内線で用件を伝える横顔を、立夫は無意識に見ていた。仕事として身につけたはずの所作が、作り物に見えない。

 用件を終え、受付に戻ると、光知子はもう一度、穏やかに頭を下げた。

「本日はありがとうございました」

 それで終わるはずだった。
 だが、立夫は足を止めた。

「……あの」

 自分でも理由の分からない衝動だった。

 二週間後、立夫は再びその会社を訪れた。仕事の口実はいくらでもあったが、受付に彼女の姿を見つけたとき、胸の奥で確かな安堵が生まれた。

「先日はどうも」

 光知子は一瞬考えるように目を細め、それから微笑んだ。

「はい。覚えています」

 それだけで、何かがほどけた気がした。
 短い会話を重ね、帰り際、立夫は思い切ってコーヒーに誘った。

「今日でなくても、別の日で」

 少し考えたのち、光知子はうなずいた。

 約束の日、落ち着いた喫茶店で向かい合い、二人はゆっくり話した。特別な話題はない。ただ、言葉が自然に続いた。

 ふと、会話が途切れた瞬間、光知子がカップに視線を落とした。

「あの……変なことを言うかもしれませんけど」

 ためらうように顔を上げる。

「私、ずっと前に会ったことがあるような気がするんです。初めてなのに、初めてじゃない感じがして……」

 立夫はすぐに笑えなかった。
 胸の奥で、説明のつかない静かな揺れが広がっていた。

「……実は、僕も同じことを思ってました」

 光知子は、ほっとしたように小さく笑った。

 それ以上、その話は深めなかった。
 深める必要がないと、二人とも分かっていた。

 恋は、静かに始まった。
 理由の分からない縁だけを残して。
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コメント

70代以上  千葉県

2/6 17:53

3. まさか、純愛系ですか。エロいのも期待しますよ~。

60代半ば  栃木県

2/6 15:12

2. どんな恋になるのでしょうね🤗🥰

60代後半  鹿児島県

2/6 8:17

1. 新しいやつですね(^O^)

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