【冥土からのラブレター 新婚2か月で失った妻】 2 母親と会う
フルーネームは佐伯 光知子
デートを重ねることで判ってきたのは彼女の母親が難病であること
それにお金もいることから アルバイトをしたいということや
自分の母親を見て苦しんでいる人を励ましたいとか
そういう会に入って活動をしていると聞いた
「そうなんですか 僕にできることは何かない?」
ということから挨拶もかねて母親と会うことになった
立夫としては、何か特別な思いがあったわけではない。
ただ、ごく自然に 好意をよせている 母親に会いたいと思った
約束の日、指定された病院は郊外の静かな場所にあった。
受付を済ませ、長い廊下を歩く。消毒薬の匂いと、どこか張りつめた空気が、
立夫の足取りをわずかに重くした。
病室に入ると、ベッドの上で痩せた女性が穏やかに微笑んだ。
佐伯美知子の母だった。
「この人が……立夫さんです」
光知子の声には、いつもより少しだけ緊張が混じっていた。
立夫は深く頭を下げ、名乗った。
「初めまして。いつも娘さんにはお世話になっています」
形式ばった言葉だったが、母親は首を振った。
「こちらこそ。娘から、よく話を聞いています」
その声は弱々しかったが、目だけは不思議なほど澄んでいた。
立夫は、その視線を正面から受け止めた。
短い時間だった。
病状の詳しい話は出なかったが、治療が長期に及び、費用もかかることは、言葉の端々から伝わってきた。
病室を出たあと、美知子はしばらく無言で歩いていた。
エレベーターの前で、ぽつりと呟いた。
「……すみません。重たいところを見せてしまって」
「いいえ」
立夫は即座に否定した。
「むしろ、会えてよかった。あなたが、どんな中で生きているのか、知りたかったし 少し分かった気がします」
美知子は驚いたように立夫を見て、それから目を伏せた。
「私、何かにすがってないと、折れてしまいそうで。だから……人を励ます会にも入ってるんです。自分が弱いから」
立夫は答えなかった。
代わりに、エレベーターの扉が閉まる音の中で、静かに思った。
――この人は、強いな。
その帰り道、立夫は改めて言った。
「アルバイトの件、任せてください。無理のない形で、必ず探します」
それは申し出というより、約束に近かった。
光知子は何度も礼を言ったが、立夫はそれ以上の言葉を求めなかった。
恋は、静かに、しかし確実に、進んでいると 立夫はそのうれしさを感じた