【冥土からのラブレター  新婚2か月で失った妻】 5 プロポーズ
30代前半  大阪府
2/6 18:21
【冥土からのラブレター  新婚2か月で失った妻】 5 プロポーズ
 ある日の帰り道、光知子は少し迷うような間を置いてから、口を開いた。

「……いつも、デートのたびにお金を出させてしまって、すみません」

 立夫は思わず足を止めた。

「いや、違う」

 即座に首を振った。

「それは僕の気持ちだ。そんなこと、考えたこともない」

 光知子は困ったように笑った。

「でも……」

「君はね」

 立夫は、言葉を選びながら続けた。

「僕にとって、もう、かけがえのない存在みたいに思い始めてるんだ」

 一瞬、風の音だけが二人の間を通り過ぎた。

「そんな……」

 光知子は小さく首を振った。

「わたしなんか、そんな女じゃないです」

 それから、少し真剣な表情になり、こう言った。

「でも……一度、見てほしいんです。難病の会の活動を・・。
 それが、今の私の環境ですから」

 立夫は、迷わず頷いた。

 数日後、立夫は彼女に連れられて、集会の場を訪れた。
 そこには、病と向き合う人たちと、その家族が集まっていた。
 決して明るい話題ばかりではない。
 だが、光知子はその輪の中で、生き生きとしていた。

 不安そうな人に、そっと声をかける。
 涙をこらえる誰かの手を、自然に握る。
 言葉は多くないが、そこには確かな温度があった。

 立夫は、少し離れた場所から、その姿を見ていた。
 そこにいたのは、守られる存在ではなかった。
 誰かを支え、励まし、立ち上がらせる人だった。

 ――この人は、慈愛そのものだ。

 胸の奥で、はっきりとした感情が形を取った。
 この女性と、人生を共にしたい。

 立夫は三十二歳。
 光知子は二十六歳。
 年齢差を思うより先に、確信があった。

 これは、偶然ではない。
 神の引き合わせだ。

 最初に出会ったとき、理由もなくそう感じたことを、立夫は思い出していた。

 その帰り道、彼は車を海岸沿いに停めた。
 夕暮れの海は、寄せては返す波を、黙々と繰り返している。

 立夫はエンジンを切り、光知子を見た。

「最初に会ったときから、思ってたんだ。これは偶然じゃないって」

 光知子は、静かに波を見つめたまま、黙っている。

「今日、それがはっきりした」

 立夫は、深く息を吸った。

「光知子。僕は……君と結婚したい」

立夫は光知子を引き寄せキスをした。頬を伝う光知子の泪

 波の音だけが、答えを待つように続いていた
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