【冥土からのラブレター 新婚2か月で失った妻】 6 母親の難病
数日後、立夫は再び、あの難病の会を訪れた。
光知子と結婚を考え始めた今、彼女の世界をもっと知りたいと思ったからだ。
集会は、いつもと変わらぬ静かな空気に包まれていた。
体調の話、生活の工夫、治療の情報。
立夫はその一つ一つを、真剣に聞いていた。
そのとき、何気ない会話の中で、耳に留まる言葉があった。
「……遺伝性、ですからね」
一瞬、意味を取り違えたのかと思った。
だが、別の参加者が頷き、静かに続ける。
「お母さまの病気は、遺伝性のものだと聞いています」
立夫の胸が、わずかにざわついた。
誰も騒がない。
誰も特別視しない。
それが、この会の日常なのだろう。
だが、立夫の中で、ほんの小さな影が生まれた。
――遺伝性。
その言葉は、重くもなく、鋭くもなかった。
それでも、確かに胸の奥に残った。
立夫は、光知子の笑顔を思い浮かべた。
あの無垢さ。
あの慈愛。
そして、あの涙。
まだ、このことを、彼女は何も言っていない。
恋は、確かに成就した。
だが、幸福のただ中で、運命は静かに、次の問いを差し出していた。