儀式
その男はいつものように静かに店に訪れた。
年齢は40代前半、色白、175cm程、体型は細身(多少胃下垂気味なのか?)、眼鏡はメタル系、髪はビジネスマンらしく短めに綺麗に整えられている。
券売機の前にたたずみ、なんの迷いもなくコインを投入する。
席に着いた彼の元に冷たい水の入ったコップを持って店員がオーダーを取りにくる。
こちらからは確認出来ないがオーダーはいつも同じ。
オーダーを終わるとお茶を取りに席を立つ。
こちらもいつものパターン。
2分も立たないうちに彼の元にオーダーした朝食が運ばれてくる。
それを確認すると、箸を取る前におもむろに彼が手を伸ばした先は
「紅しょうが」
入れ物の蓋をソロリと取り、トングで紅しょうがを掴む!掴む!掴む!
彼のオーダーした「牛丼(並)」の上には一面紅い絨毯が敷き詰められる。
満足気に眺めると彼はやっと箸を取り一口目を口に運ぶのだった。
判で押したような毎回の「儀式」…
それを微笑ましく眺めながら
今日が一日平和である事を願う私がいる。