😦


俺は､高校を出て すぐに就職しました


お袋は､大学へ進学して欲しかったみたいでしたが…


親父を病気で亡くし､身を粉にして働くお袋の姿を見ていて 進学する気はサラサラありませんでした


まぁ・・・


勉強は あまり好きじゃなかったってのが本当なんですけどね（笑）



という事で


俺は､高校卒業後 就職する事にしました


でも 明確に入りたい会社があった訳でもありません


ただ 物作りが好きだったので どっかの工場で働きたいとは思っていました


しかし


結局､入りたい会社も見つからず 進路指導の先生に相談する事になりました



進路指導の先生は､『おやっさん』ってあだ名で呼ばれている強面の５７歳の先生です



俺は 進路指導室に行って おやっさんに指導を受ける事になります


近くで見ると、おやっさんは､やはり強面で凶暴な顔でした



進路指導室で､凶暴な顔のおやっさんと２人っきり…


凄く緊張してた思い出があります



｢どんな仕事がしたいんだ？｣


そんな俺に、おやっさんは､俺にそう問い掛けます



『物を作る工場で働きたい』



・・・俺は､そう答えました



それを聞くと、おやっさんは テーブルの下から 小さな箱を取り出しました


箱は､綺麗にラッピングされ リボンまで付いています


おやっさんは、その箱を俺に差し出し箱を開けるよう指示しました



俺は、言われるまま箱を開けます


ラッピングされてる箱の紐を切り 紙を破って箱を開けてみると､箱の中は空っぽです


戸惑ってる俺に・・おやっさんは・・・


『お前は､大量生産型の工場の方が向いているな』


そう言いました



どうやら おやっさんは 箱の開け方で 適性を見てるみたいです


紐を解き 紙を破らないで、丁寧に箱を開ける生徒には サービス業とか 大量生産でない会社を薦めてるみたいです


結局


俺は おやっさんの勧めもあり 大手の生産工場に就職する事になりました



生徒に､適性に合った進路をアドバイスしてくれる・・おやっさん


しかし・・・


俺は､１つの疑問を持ちました



おやっさんは､５７歳になっても 校長どころか教頭にもなっていません


人の適性を的確に捉えられる、おやっさんなのだが・・


自分自身の適性は捉えていたのでしょうか？


おやっさんにとって 教師は天職だったのでしょうか？


勇気を出して おやっさんに聞いてみました


おやっさんは ニヤリとしましたが 何も答えてくれませんでした



後で､担任に聞くと おやっさんは ､校長への推薦を過去２度も受け辞退してたそうです



それから



無事、俺は学校を卒業し就職先で頑張っていました



半年後､俺は学校に遊びに行きます


担任に挨拶､そして近況報告し・・・



お世話になった おやっさんの所に行きました


おやっさんは､進路指導室で 今年も空箱にラッピングしています


俺が､挨拶に行くと


おうっ！


無愛想な一言です



そして､おやっさんは俺に問い掛けます


『仕事は どぎゃんや ？キツいだろ？』




俺は


『キツくて大変ですけど 好きですから』


そう答えます


すると､おやっさんは､一瞬､凄い怖い顔になり そして吹き出しました


ワッハッハ大声で笑い出しました



そして箱のラッピングの作業を続けます




その・・



箱の中には愛が詰まっています