俺には､２人の叔父さんがいました


俺が､１５歳の時亡くなった親父の兄さんにあたります




この２人の叔父さんは 一卵性双生児で 兄さんの方が『政男』弟さんが『秀男』といいます


２人は､双子なので当然そっくりなのですが､歳を重ねる度､更に見分けが付かない程そっくりになっていました


まぁ、親戚である自分達から見れば､なんとなく雰囲気とかで見分けられる、そんな感じです



しかし､この２人は､双子の兄弟にも関わらず仲が良くありません



前に、お爺さんが亡くなった際、財産分与で２人は激しく揉めた為です



それに､奥さん同士が元々仲が悪く､この両家は完全に疎遠状態になっていました



その為、親戚の連中も色々 仲介に入ったりもしたのですが ２人の関係改善には至りませんでした




10年程前の出来事になります


この年､長男である政男叔父さんが入院しました


末期の腎臓癌でした



もう､長くは生きられないということで 親戚一同病院に 交代で見舞いに行っていました


そんな状況にも関わらず、双子の弟の秀男叔父さんは見舞いに一度も来ません



２人の確執が､いかに深いかが良く分かります



それに


入院している､政男叔父さんも 一切 秀男叔父さんの事を口に出す事もありませんでした


そして､政男叔父さんは病状が悪化し亡くなるのですが、死ぬ間際になって・・


『秀に 済まなかったと伝えてくれ』そう言い残し、この世を去りました


血の繋がった 双子の兄弟です


本当は､仲直りしたかったのでしょう・・


寂しかったのでしょう・・




政男叔父さんは､夕方遅くに亡くなり・・


遺体は､この日は病院の霊安室で一晩過ごし､明日一番で 引き取り通夜と決まりました


それから


政男叔父さんが亡くなった直後、 数人の親戚は秀男叔父さんの家に直行します


俺も、一緒に行きました


秀男叔父さんに 通夜 葬儀に出席するよう説得する為です



その日､秀男叔父さんは、家ではあまり呑まない酒を飲んでいました



そして、親戚の伯母さんの説得に黙って頷いています



政男叔父さんが 死ぬ間際、秀男叔父さんに謝罪をしながら､息を引き取った事も伝えられました


秀男叔父さんは､黙って下を向いたままでした


結局


親戚の人達の熱心な説得もあり、秀男叔父さんは 通夜にも葬儀にも出席してくれるって事になりました



親戚一同、安心して帰る事が出来ます


そして


俺が帰ろうとすると 秀男叔父さんは、『今から､俺を病院に連れて行ってくれんかい』


突然 言い出しました



少し涙ぐみ 切羽詰まった感じです


しかし 時間は夜９時を とっくに廻っています


病院が 空いてるのかも分かりません



しかし


俺は､秀男叔父さんの 思い詰めた淋しそうな表情を見て 断れなくなっていました



俺は､秀男叔父さんを車の助手席に乗せると、病院に向かい連れて行きます



やはり､病院の正門は閉まっていましたが､面会用の裏口は空いていました



秀男叔父さんは 俺に…


『兄貴を一目見て 詫びを入れてくる』


そう言って 裏口から入って行きました



秀男叔父さんが､政男叔父さんの事を兄貴と呼んだのは､数十年振りです


病院の裏口に歩いて行く後ろ姿は､背中が寂しく泣いています


秀男叔父さんも やはり 政男叔父さんと 本当は仲直りしたかったに違いありません



２人は､血の繋がった兄弟です ましてや双子の兄弟なのです

あれ・・・れ



・・双子？　双子・・ふたご！！


あ～あぁぁぁぁ～あっ！



手遅れでした（泣）




秀男叔父さんが 裏口から入って 数分後


きゃあ～あああーぁ～


駐車場でも 聞こえるような､大きな悲鳴が病院内で起こります




死んだ筈の政男叔父さんにそっくりな秀男叔父さんが、夜間の病院内をうろついた為、病院は大パニックとなります


結局

当直の医師 看護師２人が 腰を抜かし、１人の看護師が 失神するという大惨事になりました



通夜当日


この事で俺と秀男叔父さんは 親戚一同に酷く叱られました


それに、葬式では この話題のせいで 悲しくない葬儀になってしまいました


笑いが絶えない葬儀


まぁ 辛気臭い事が 嫌いだった 政男叔父さんには良かったかもしれません　



そして､５年前秀男叔父さんも 病気で亡くなりました


政男叔父さんと同じ腎臓癌です



葬式では やはり この話題が持ち上がり悲しい葬儀には成りませんでした






今頃 ２人は天国で仲良く


いやいや、今でも喧嘩しているのかもしれません