(゜ロ゜)



‥今から、40年以上昔の話しです




小雪が舞う 寒い夜の出来事でした…


その日､まだ幼かった俺と母親は 隣町の路地を寂しく歩いていました


これには 訳があります


実は､母親は父親と大喧嘩をして 俺を連れて家を飛び出したのでした



俺が まだ９歳の頃の事です


宛ても無く ２人はトボトボと寂しく暗い路地を歩いていました



俺も､母親も夕飯を食べずに家を飛び出した為、空腹でした


しばらく歩いていると 一軒の家から灯りが見えます



近くまで来ると そこは古びた小さな酒屋さんでした


その酒屋さんには お酒以外にも、 僅かですが食料品も売っています


お腹が空いている 俺に…


母親は『パンでも食おうね』



…そう言って、母親は俺を連れ店内に入りました


母親は､激しく父親と喧嘩し興奮して家を飛び出して来た為 お金を僅かしか持って来ていません


パンを２つ買うのが やっとです


でも…幼かった俺は、母親に無理を言います



『カップ焼きそばが食べたいよ～』



母親は､困りました


お金は､カップ焼きばを一個買うだけしかありません


それに､お湯だってありません



それでも…俺は､泣きながら カップ焼きそばを おねだりします



すると


酒屋の奥から７０歳位のお婆さんが出てきました


母親は 一個のカップ焼きそばをレジに持って行き お湯も欲しいと お願いしました



酒屋の お婆さんは少し驚いていましたが 優しい笑顔で ２人を お店の奥座敷に上げてくれました


お婆さんは 泣いていた 俺をなだめると 母親に訳を聞きました


すると
　

母親も泣き出し お婆さんに夫婦喧嘩して家を飛び出して来た事を話しました



訳を聞いた お婆さんは 、カップ焼きそばを２つ作ってくれました


そして､自分の話しを始めます


このお婆さんは、戦争で 愛するご主人を亡くし‥


苦労に苦労を重ね、たった１人で 息子を育てあげたそうです


それから


お婆さんは､母親を たしなだめると子供の為にも､家に帰るよう言いました



そして､２人がカップ焼きそばを食べ終わると お婆さんは２人を軽トラに乗せ 家に送ってくれたのです　


家に着くと 灯りは点いていません



どうやら、父親も心配して 家出した俺達２人を探し廻っているようです

　
そんな状況の中‥


お婆さんは､優しい笑顔で 俺に…


『お母さん お父さんを大事にせんといかんよ』


そう言って立ち去りました





…それから１５年経過…




俺は､そこそこ立派な青年に成長しました



そして…小雪の舞う ある日…



俺は､隣町の酒屋さんに来ています



そう


１５年前の、あの酒屋さんです



しかし 残念ながら お店には 中年のオジサンが１人いるだけです



もう､あの時のお婆さんは亡くなったのかもしれない


そんな事を想いながら、１本の焼酎とカップ焼きそばを レジに持って行きました


すると



奥から お婆さんが出てきたのです


髪の毛は､真っ白 顔はシワクチャですが あの時のお婆さんでした


お婆さんは ご健在だったのです



そして､お婆さんと目と目が合いました


すると…


お婆さんは､ 俺を見ると､懐かしそうに優しい笑顔を浮かべました



そして､シワクチャの手で 俺の手を握りしめてくれたのです



『覚えててくれたんですね』


俺は、お婆さんにそう問い掛けました


すると


お婆さんは、 そっと静かに頷き…


『忘れる訳なかろうもん』


そう言ってくれたのです‥





俺　(T_T)
『…おっ お婆さん…』


お婆さん　(´-ι_-｀)
『よう戻って来たな…』



俺　(>o<)
『…おっ…お婆さ～ん～』



お婆さん　(>o<)
『…けっ…敬介～』



俺(・・;)?？?
『えっ‥あの～敬介？…俺、カズっすよ…』


お婆さん　(>o<)
『敬介～』



俺　(>o<)
『お婆さ～ん～』



お婆さん　(>o<)
『敬介～』


俺　(>o<)
『お婆～さ～ん』


お婆さん　(>o<)
『敬～介～』　




※敬介→戦争で亡くなったお婆さんの旦那の名前でした




※６年前日記再掲載です