国境の島 “与那国”(沖縄県与那国町)で2月22日、陸上自衛隊配備の賛否を問う住民投票
日本最西端の与那国島(沖縄県与那国町)で2月22日、陸上自衛隊配備の賛否を問う住民投票が実施され、賛成派が過半数を獲得しました。
最終投票率は85.74%で、票数はこうです。
賛成 632票
反対 445票
無効 17票
現在の外間守吉町長は賛成派ですが、
2009年の町長選で再選した時は103票差。
2013年の町長選で3選した時は、わずか47票差。
今回の住民投票では187票差ですから、賛成派がかなり票を伸ばしたことになります。
産経新聞によれば、与党(賛成派)町議は、「103票以上の『大差』をつけ、決着をつける」と言っていたそうです。
賛成派の勝利を受け、外間町長は記者団に対して「今後は防衛省を含めて行政運営がスムーズに進むと安堵している」と述べました。
もし反対派が勝っていたらとんでもないことになったかもしれないだけに、安心しました。
しかし、今回の住民投票には大きな問題点がいくつもありました。
●国防に関する賛否を自治体の住民投票で決めることの是非。
●「投票資格者」に中学生と永住外国人を加えたことの是非。
●駐屯地建設はすでに始まっていて、2015年度末には150人規模の隊員が配置される予定。住民投票で反対が多数になっても建設が止まるわけではないこと。
※また、今回の住民投票では、「投票資格者」に中学生と永住外国人を加えたことでも非常に注目されました。
告示日前日の1月22日時点の有権者数は1284人で、うち中学生41人(未成年全体では97人)、永住外国人5人。
住民投票条例を提案した野党の田里千代基町議(彼は2009年の町長選で民主党の支援を受け出馬したが外間町長に敗北している)は、中学生と永住外国人を加えたことについて、こう主張したそうです。
「人生を左右される問題で、中学生が自分の意思を表示することは何ら問題ではない」「島に住む外国人も税金を払っている。自治の観点からは投票権を持つのは当然だ」
国防に関する判断を中学生や外国人に委ねるなんて絶対にあり得ません。
以下、八重山日報編集長の仲新城誠(なかあらしろ・まこと)氏の論説から。(「正論」2015年3月号(1月末発売)掲載)
《住民投票実施までの経緯》
2008年9月
住民の署名を受け、町議会が自衛隊の誘致を決議。
国境の島として警察官2名だけでは問題があることや島の活性化が理由(※これ以前にも中国の調査船が現れるなどしていたので誘致構想はあった)。
※2009年8月
町長選で誘致推進派の外間守吉町長が103票差で再選。
2010年4月
北澤防衛大臣(当時)が南西諸島への陸上自衛隊部隊の配備に向けて、次年度予算案に調査費を計上する考えを表明。
2012年7月
※反対派が住民条例の制定を求める588人分の署名を提出。
2013年3月
外間町長が基地設置の迷惑料として10億円を要求。その後、与那国町はこれを取り下げ、土地の年間賃貸料を1500万円とすることで防衛省と妥結。
同年6月
与那国町と沖縄防衛局が、配備予定地を貸す仮契約を締結。
※同年8月
町長選で自衛隊配備の是非が争点になり、推進派の外間氏が47票差で3選を果たす。
2014年3月
国と与那国町との間で町有地を貸す契約が正式に締結。
同年4月
小野寺防衛大臣(当時)出席のもと、沿岸監視部隊背部のための着工式典が開かれた。
同年9月
町議選で与野党が3対3の同数になり、与党議員が議長に就任。議長は採決に加わらないため、議会勢力が野党優位になった。
同年12月
野党が町議会で住民投票条例を賛成多数で成立させ、住民投票の実施が決定。
直後、町長が首長に与えられた拒否権である「再議」権を行使し、条例を議会に差し戻した。
再議にかけられた予算や条例を再可決するには、議会で3分の2以上の多数が必要になる。
野党3、与党2の町議会では再可決できないので、条例は廃案になると思われた。
しかし、野党が成立させた住民投票条例の条文にとんでもないミスが発覚。
条例では自衛隊配備に対する賛否を問う欄に「○」の記号を記入して投票することを定めているが、「○の記号以外の事項を記載したもの」は無効になるという趣旨の条文を入れるつもりが、野党は議会に条例を提出した際、誤って「○の記号以外の事項を記載しないもの」は無効になるとタイプしてしまった。
この条文の通り条例を執行すると「○」の記号だけを記した投票はすべて無効になる。要するにすべての投票が無効になる可能性が出てくる。
町長は審議の過程でこの事実を指摘、町当局も「執行不可能」という認識を示したが、野党は条例を再可決する構えを見せたため、反発した与党が退席。
※野党だけの全会一致で、条文にミスがある条例が再可決された。
臨時議会で野党が改正案を提出したが、町長が再び再議権を行使し、今度は改正案が廃案になった(この時点でミスがある条例は存続したまま)。
続く12月議会で、条例の再議に抗議した野党を、町長が「(住民投票は)重要な案件だ。皆さんは慎重に出すべきだった。しかし強引に可決した。皆さんのミスを私に責任転嫁するのか」と批判し、議場は町長と野党の怒号が飛び交った。
が、最終的に町長は「断腸の思いだが、百歩譲って住民投票は実施する」という姿勢に転じた。
2015年1月
臨時議会で住民投票条例の条文ミスが野党の賛成多数で改正され、当初案の通り、住民投票は実施されることになった。
町長は、住民投票で配備反対が多数を占めた場合の対応について「従来とは環境が変わる。町から自衛隊への協力は積極的に行わないことになる」と明言。
2月22日
住民投票実施。即日開票され、賛成派が過半数を占めた。
このように、住民投票の実施までに町議会では紆余曲折と、非常に奇妙な経緯をたどる。
※仲新城誠氏の指摘。
「賛成が多数を占めても町の政策は従来と変わるわけでもなく、反対派が反対運動をやめる確約もない。反対多数になれば自衛隊に協力してきた町の政策が転換される。つまり配備推進派だけがリスクを背負う住民投票なのである」
※住民が判断を示したのはこれが3度目。
2009年と2013年の町長選で自衛隊配備の是非は争点となっており、いずれも住民は賛成の「民意」を示していた。
過去の町長選が僅差だったとはいえ
なぜ3度も「民意」を問う必要があるのか。
それも住民投票条例をわざわざ作ってまで……
外から見ていると誠に理解し難い状況です。