映画レビュー2017 #9 『ブレード・ランナー 2049』"Blade Runner 2049"
50代前半  愛知県
2017/11/08 18:03
映画レビュー2017 #9 『ブレード・ランナー 2049』"Blade Runner 2049"
"Blade Runner 2049"

2017 アメリカ : ネオ・ノワールSF


Directed by Denis Villeneuve
Produced by:
Andrew A. Kosove
Broderick Johnson
Bud Yorkin
Cynthia Sikes Yorkin
Screenplay by Hampton Fancher, Michael Green
Story by Hampton Fancher
Based on Characters from Do Androids Dream of Electric Sheep? by Philip K. Dick

Starring:
Ryan Gosling
Harrison Ford
Ana de Armas
Sylvia Hoeks
Robin Wright
Mackenzie Davis
Carla Juri
Lennie James
Dave Bautista
Jared Leto

Music by Hans Zimmer, Benjamin Wallfisch
Cinematography by Roger A. Deakins
Edited by Joe Walker

Production companies:
Warner Bros. Pictures
Alcon Media Group
Columbia Pictures
Scott Free Productions
Alcon Entertainment
Torridon Films
16:14 Entertainment
Thunderbird Entertainment
Distributed by Warner Bros. Pictures (United States)
Sony Pictures Releasing (International)[1][2]
Release date
October 3, 2017 (Dolby Theatre)
October 6, 2017 (United States)
Running time
163 minutes[3]
Country United States
Language English
Budget $150–185 million[4][5][6][7]
Box office $240.6 million[7]



長らく世界中の「ブレード・ランナー」ファンが待ったと思われる待望の続編が、遂にドゥニ・ヴィルヌーヴという非常に才能ある監督によって、完成され公開された。

アメリカなどでもヒットしており、一見興行成績が今一つのような意見もあるが、上映時間が長い為、当然ながら上演回数が減り、一定期間内での興行収入成績が減るのは、数学的必然であるので、元々、不利な条件の映画だ。

それより驚いたのは日本でも、外国でもヒットしているという事実だ。私は大分たって観に行ったのだが、お客さんの数が意外に多かったので、仰天した。昔、「ブレード・ランナー」公開時に、私が映画館で観て「傑作だ!」と興奮した時は、席はガラガラというか、2,3人しかお客はいなかったというのに!(笑)

当時は映画もそうだが音楽がやたらと良く、思わず映画の帰りに、レコード屋さんに、サウンドトラックも買いに行ってしまった。そのレコードには、愛のテーマのサックスの奏者クレジットを見た時に、Tom Scottの名前を見て、「やっぱり」!と当てて更に盛り上がったものだ。(笑)

まあ、つまり、当時は誰も、そんなにいい映画とは思っていなかった。俺以外は(笑)。「ブレード・ランナー」公開は1982年。UFOが本当にスクリーンに初めて本当にリアルに目の前を飛んだのが、スピルバーグ監督の「未知との遭遇」1977年。そして、車が、初めて自由にリアルに時空を越えて空を飛ぶのに驚いたのが、ゼメキス監督「バック・トゥー・ザ・フューチャー」1985年。この「ブレード・ランナー」はちょうどその間。しかも、未来の町並み、そして社会まで、映像化している。

まあ、原作が、かのフィリップ・K・ディック。基本コンセプトが素晴らしいので、功績は、彼にあるのは当然だ。つまり、「ブレード・ランナー」つまり、「アンドロイドは羊の夢を見るか?」でディックが思い描いた世界は、タイトルにあるとおり、アンドロイドとは?ひいては、人間とは?という疑問だったに違いない。

そういう意味では、このヴィルヌーヴ監督による新作「ブレード・ランナー 2049」は、かなり成功している作品なのではないか。と言うことだ。実は、私はこういう筋書きの映画だとは想像していなかった。ここでは、ライアン・ゴスリング演ずる主人公が何者か?と言うことが非常に重要だが、話すと観賞を著しく妨げるので、ここでは言わない。

この映画の中で、私は出だしが1番驚いた。こういう設定のこーゆー映画だったとは、流石ヴィルヌーヴと思った。そこで一気に期待が沸いた作品だったが、ヴィルヌーヴらしい映像、そして、途中で、作曲家がシンセサイザー・サントラの第一人者ハンス・ジマーに変わったが、その理由がなるほどな、オリジナルのヴァンゲリスのスコアを大切にしながら、新しく今風の処理に焼き直した音楽。個性的で思いきったキャスティング。随所に繊細な演出がちりばめられた、細かな映画的なヴィルヌーヴ演出。そして、切ない物語、とハートウォーミングなラスト・シーン。全てにおいてかなり映画的には点数は高いと基本的には感じられた。

2時間43分、時間もさして感じず見終わって、「なるほど、興味深い。いい映画だ。」しかし「傑作」とは、言えなかった。これは、前作のSF"Arrival"でも、同じように感じた事だった。映像もなかなか個性的で確実にヴィルヌーヴ映画しているし、内容もヴィルヌーヴ独自の書き直しを感じた。しかし、何かが足りない気もした。

今回も思ったのが、ラスト、クライマックスが、おかしい、と感じた。敢えて指摘しないが、ラストシーンではなく、クライマックスが、ずるいというか、煮え切らない。まだ、「シカリオ」のラストシーンの幕切れ、の方がずっと説得力があるし凡庸さを逸脱して真実に近いと思う。

と言うことで、「ブレード・ランナー2049」実にシンプルで解りやすい映画にした分、逆に仕上げるのに難しい映画になり、真実への探求からはやや距離を置いた、良くも悪くも2時間43分もかけた割には、未解決感覚を多分に感じるSF映画で、そういう内容の映画だと言えば、それでいい映画ではあるが、残念な気もした払拭できない残量感を感じる微妙な映画だ。いい出だしだったのに惜しい気がした。主人公設定が特殊なため、確かに非常に難しい映画に臨んだヴィルヌーヴ監督の意気込みは素晴らしいが、もう少し頑張って欲しかった気がした。

ヴィルヌーヴ監督はどちらかというと、SFではなく、社会ドラマにより真価を発揮する監督だ、という印象が更に強くなったかもしれない映画でした。やはりSF映画は実に難しい。映像がそれっぽければいい訳でもなく、科学的に正確であればいい訳でもない。そういう意味では、リドリー・スコット監督のフィルム・ノワール路線に乗ってサラッと仕上げた「ブレード・ランナー」は、実に賢明な素晴らしい選択だったと今更ながら再認識した次第である。



★★★★

(最高点=★★★★★)

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