節分のおもひで
学生の頃ある体育会系の部活に所属していました。そこのOBに名古屋では超有名観音の御子息がおりまして、毎年うちの部活のメンバーは日給12000円のなかなかキツい節分のアルバイトに駆り出されていました。
人によっては2月の2日から4日まで泊まり込みで、大半は3日の朝5時に集まっては働いておりました。あたし達が任されていたのは御祈祷券の販売、御祈祷の際に本堂で豆を撒くのでその掃除、下足番等。因みにどこも寒いことこの上ないのです。
一年生の初めてのお仕事、忘れもしませんその日は雪が降ってました。朝早くに某観音へ出向きまずは下足番の方へ回されました。下足番にはもうン十年に渡ってこの時期お仕事されているおじいさま方々が日本酒飲みながら『おーおー今年も来たか、まあ温まるでまず一杯』と湯呑みにどぼどぼ冷やの日本酒を注いで下さいます。
朝5時過ぎです、空きっ腹です、見掛けに大いに反してあたしは全くお酒が飲めません。違う場所を手伝ってと呼ばれて申し訳程度に口をつけただけの湯呑みをこそっと置いて行こうとすると、目敏いじじぃ、もといおじいさまが『おい、おねーちゃん全然飲んでないやん、あかんよ』と呼び止めるではないですか。「いや、お酒得意じゃないんで…」『飲んだら温まるから飲んでけ』仕方ないので飲みました。
ものの数十分でものすごい寒気と気持ち悪さが襲ってきてへたりこんで動けなくなってしまいました。くそ忙しい中で人目も気にする余裕もなく踞るあたくし。
体育会の部活は上下関係が厳しいので、OBっつったら雲の上の存在みたいなもんです。そこから高給を出してもらうからには働かなきゃならないのです。そんな中一番ぺーぺーの一年生が働かない(働けない)、あたしがお酒だめなのも先輩達はある程度承知しているもののこんな時に失態こきやがって的な雰囲気は感じるもののどうにもならない。
下足番のおじいさん達も様子を見に来て『あっちゃー本当に飲ませちゃいけなかったな』と言ってたのも気付いてるけど返事もできない。漸くちょっとましになってきた頃、相当忙しい最中件の雲の上OBがやって来て『本当に今日はごめんね。動けるようになったら帰ってもらっていいから』と日給の半分が入った封筒を渡して下さいました。全く働いていないあたしは返そうとしたのですが、『いいから取っておいて』
先輩や同期の冷たい目線を浴びつつとぼとぼ帰る。(仕事キツいからね)実家に帰るより手前にある祖母の家に電話して少し休ませてもらうようにお願いして立ち寄り暫く休ませて貰う間に祖母が母を呼び迎えに来てもらって帰った。
後日先輩や同期らに『これっぽっちも働いてないのに6000円も貰いやがって!』だの『そのお金で何か奢れ!』とか散々な言われよう(>_<")飲める人間には分からないでしょうがこちとら命に関わるんですよ、まじで。
後年、下足番のおじいさん達から『おっと、あんたは飲めんのだったな』とそれ以降飲まされることは無くなりました(笑)
20年以上経った今でも節分の頃に鮮やかに蘇る出来事です