檜の香りただようその浴場、
窓より射し込むは西日になりつつも、
わずかに目がくらむ程のまばゆき遮光


その館に従事し女官、風呂椅子に腰掛け、
恥ずかし気にも、凛とした背すじのままうつむき


艶やかに、結いほどかれしその髪は斜陽に映じ、
その裸身とともに、さらに神々しくも照らし出されし


「本来なれば、私が御背中流すところに…」


心苦しき面もち隠せず、
その背後には、白浴衣にて両膝つく家主


「良きに、いつもそなたには労掛けし、時には我が背中流す」


家主の桶よりしたたれたその落ち湯、
おなごの黒々とした頭の先へと、きめ細かくも髪にしみ入り


片側に髪まとめ下ろし、その逆…
あらわになりし首筋に一筋の流れ、

肩口から背中に一閃走るやいなや、びくりとまばたく背筋の芯


女官からおなごに変わりし時


家主は髪を下に下にとその手で洗い
終えると、
手のひらを首筋に、そっと、しなやかなる手さばきにて…触れし

一瞬ぴくりと…

静かに、ゆるりと、洗うというよりお湯とともに撫でるが正しきやも


おなごの吐息、かすかに速まるも、
主の手は止まらずに

背中から腰に掛けて撫で下ろす様は、
筆先をゆっくりと縦にはらうが如く


「では、両腕を上に」


「は、はい…」


腰撫でし主の両手、その速さ緩めて再び上に、
ついには両脇から手を回し、突き出した柔らかき丘に至る


「はぅっ…」


思わず声発するも、
主の両手ことさらに優しげく、上下左右と…撫で回すというよりも、さすりさすりと動きを止めず


「うっ…ふっ…」


もはやこらえぬ事できぬその口からは、悦に楽にも込めし声

上、半身はしなやかなる海老反る様

おなごの頭、背後の主の肩にもたげ、両手も主の二の腕に掴まり


主の両手は丘の頂を、上下左右、時には円描くく如く滑らかに…


吐息次第に荒しげく、気付かぬ内のそのあえぎ音と、お湯の流るる音の調和、
見事な旋律にて奏でられ、その場内に響き渡りし


主のしたたかなる両手、地をはう蛇の如く、
ついには水の流れがまとまりし、下腹より三角の洞にたどり着き


「はぁ…！」


もはやその声押し殺す事ままならず、吐息一層激しく、
快感境地への橋に足掛かりし…

顔火照り、目とろけ憂い、
下流の溢れし泉には、流れ落ち湯が溶け込み合い、

更にはう蛇、前後にその動き繰り返し


「落ちそうに…はうっ！」


主の両手いつしか、したたかなる十匹の蛇に変化し、いつしか開脚の間を縦横無尽にまさぐり合い

更に一匹二匹と琴奏でるが如くはい回り、蜜壺へとたどり着きし


おなご、顔の紅潮最たるとともにその眉間には悶えの二筋くっきりと


蛇、長き一匹を頭とし、優しくまったり繰り返し、
最期、擦り合わせした刹那、
その艶やかな二唇の間からは


「ああ～！…くぅっ…！」


その妖艶なる海老反りは、びくり、びくりと数度波打ち、

享悦の極みともに、一瞬菩薩の海に浸るが如くに…絶えし



…嗚呼…余韻



「御恥ずかしきところを…」


次第に吐息安らかになりつつも、
主に拭き取られしその肌は、
紅潮も引き、悦を終えた柔らかさ取り戻しき


「拭き取りしこの肌、何と艶やかなることか！」


声高らかに発する主の胸で、しばしまどろむおなご




白昼の浴場、欲情にありし候…






「はい！ 洗車～拭取り終了！ 」

「ぴっかぴか！！」



※我が愛馬、漆黒の二座席オープンカー
…その名は、地をはう烏蛇から由来し
「蛇黒」(ヘビイグロ)と申す(▼,▼)ゝ