「さよなら、錦糸町」 その1
40代後半  千葉県
2017/08/14 9:54
「さよなら、錦糸町」 その1
もうずっと昔
19歳の時に、喫茶店でアルバイトをしていた時の話
夏のこの時期になると必ず思い出す、
チョット怖かった話



錦糸町駅から歩いて3分程の商業ビルの一階にあるその店は、カウンターに4人、2人掛けテーブル席が2つと、4人掛けテーブルが2つのこじんまりとした店だった。

独身、競馬好きで、髭の似合うダンディな
30代後半の、優しいマスターが1人いて、あとは常にバイトを雇って営業をしていた。

錦糸町という土地柄もあって、個性的なお客さんが、入れ替わり来店するので とても面白く、飽きる事が無かった。


競馬で負けて、スッカラカンなのに店に来て、「お金は無いが腹が減ったから何か食わせろ! その後に皿洗いでもなんでもして、働いて飯代を返す!」と 無茶苦茶な事を言った後、ニコッと笑うと 前歯が全部ない おじいちゃん。


派手な服装で サングラスを付けたまま、入店していきなり、
「人に追われてるの、、、だから アイスコーヒーをお願い!」と 追われているにも拘らず、何故かアイスコーヒーをオーダーする、訳の分からない サスペンス系の熟女が来店したり、とにかく一癖も二癖もある人達が来店する、とても面白いお店だった。

そんな 楽しいバイト先の喫茶店に、その日も個性的なお客さんが来店した。

8月も中旬に入り、お盆の時期を迎えようとしていた週末の日曜日の午後、マスターが食材の買い出しに行ってる間、俺1人で店番をしていると、チンピラ風の男が一人で店にやって来た。

「いらっしゃいませ~」

そう声をかけると、面倒くさそうにこちらに一瞥をくれて、店の一番奥の 4人掛けテーブルに何故か 壁と向き合い、こちらに背を向けて座るチンピラ風の男。

男の顔は、はっきり見えなかったが、体型は中肉中背で特徴がない 、ただチンピラ風でタチが悪そうだという事は分かる。


– なんかヤバそうな奴だなぁ、、、
気を付けないと、なにかしらの因縁を吹っかけられそうだ、、、–


早速 水とおしぼりをトレーに乗せ、メニューを見ているチンピラ風の男が座るテーブルに行き、オーダーを伺う。

「ご注文お決まりでしたら
承りますが、、、」

すると、背を向けていた男が くるりと体をこちらに向けた。


– おっ! チンピラ風の男のわりに 柳沢慎吾に似た、おっちょこちょい顔で、田舎の売れないホストみたいだ(笑)–


そう思っていると、チンピラ風のおっちょこちょい顔の男が、ゆっくりと静かに俺に話しかける。


「アンちゃんよ~、ピザはねーのか?」


声が少しハスキーで、しかもハイトーンなので 余計に 柳沢慎吾に似て見えてくる。

「申し訳ありません。ピザはないですね~[あせあせ(飛び散る汗)]
軽食でしたら、サンドイッチやエビピラフ、などがありますが、、、[あせあせ(飛び散る汗)]

すると、いきなり

「アンちゃんよ~サンドイッチが食いて~んじゃ ね~んだよっ!
ピザが食いて~んだよっ[むかっ(怒り)]!」

柳沢慎吾似のチンピラ男が、キレ気味に声を荒げて言う。

「すっすみません、メニューに無いものは、おっお出しできないんですが、、、[あせあせ(飛び散る汗)]

いくら柳沢慎吾 似のおっちょこちょい顔でも、声を大きくして言われると、こちらも萎縮してしまう。
他にお客さんがいれば、こんなに大きな声も出さないだろうに、今 この店には、俺とタチの悪い おっちょこちょい顔のチンピラと二人しかいない。


–こっこんな時に、誰か別のお客さんが来てくれたらな~[あせあせ(飛び散る汗)]


そう思っていると、俺の願いが通じたのか 不意に店の扉が開いた。

– やったぞ!客だ!これぞ天の助け!
別の客がいれば、おっちょこちょい顔の
チンピラも、大きな声を出す事も無いぞ!-

そう思って、来店した客に 満面の笑みで


「いらっしゃいませ~~[ハート(ドキドキ)]」と言う。


すると、おっちょこちょい顔のチンピラも俺に負けないくらいの 満面の笑みで

「オヤッさん! ご苦労様です!」

と頭を下げる。






((((;゚Д゚)))))))[あせあせ(飛び散る汗)]

- オヤッさん?、、、
チンピラの知り合い?
てか もろ組の人 [あせあせ(飛び散る汗)]
てか もろ極道じゃん[あせあせ(飛び散る汗)][あせあせ(飛び散る汗)]

おっちょこちょい顔のチンピラが、“オヤッさん” と満面の笑みで言った相手は、背が高く恰幅のいい安部譲二によく似た男で、
どこからどう見ても

“ざ・やくざ ”

フランス風に言うと

“La・ヤクザ ”

だった、、、




(;゙゚'ω゚'): [あせあせ(飛び散る汗)] ザ・ピ ン チ、、、

-この状況で ボスキャラの登場はマズイ!
早く ヒゲのマスター 帰って来てくれないか
な~!!
チクショー 何でこんな時に、店に居ないん
だよ!!
あの ヒゲ 野郎!!–

そう 心の中でマスターに毒突いていると、
オヤッさんと呼ばれる、安部譲二に 似た男をチンピラ男が、自分の居る席に案内していた。

とりあえず、水とおしぼりを再び奥の席に持って行くと、おっちょこちょい顔の柳沢慎吾似の男が、オヤッさんに告げ口をするように言う


「オヤッさん、この店 ピザが 無いそうなんっすよ~」


渋々と告げる。


- えっっ!ピザって、、、
オヤッさんが 食べたかっ たの?、、、
( ゚д゚)[あせあせ(飛び散る汗)]
この 360度 どの角度から見ても
“ざ・やくざ ” な オヤッさんが食べたかっ
たの?、、、[あせあせ(飛び散る汗)]





[あせあせ(飛び散る汗)]( ゚д゚) や ・ ば ・ く ・ ね ?-



俺の心中を察したのか、オヤッさんは 俺に鋭い眼光を向けて静かに言う、

「無きゃ~買って来いよ、、、」


- ゲッ!
何 この低く響く声!
声は中尾彬にそっくりじゃねーか!!
見た目は 安部譲二で声が中尾彬って、
ドラマや映画でもなかなか出てこない、
相当クオリティーの高い “やくざ”だよ[あせあせ(飛び散る汗)]


「あと、ビールくれ
アサヒのスーパードライ、、、」


「あの、、、(・_・; すみません、ビールは
キリンのラガーか一番搾りしか置いてないんですが、、、[あせあせ(飛び散る汗)]









「、、、無きゃ~買って来いよ、、、」


鋭い眼光で睨みを利かせながら、中尾彬ばりの声で静かに言う。



- 買って来いって、そんな無茶苦茶なっ!
だいたい、ピザが食べたいなら、ピザ屋
に行けばいいし、ビールが飲みたければ
こんな喫茶店じゃなくて、居酒屋にでも
行けばいいじゃねぇかっ!! -


と 思いっきり言いたかったが、当然 言う事なんか出来ずに、答えに困っていると
突然、オヤッさんが大きな声で



「わかったら、早く持って来いやっっっ!![むかっ(怒り)]




「ヒャイーッ[あせあせ(飛び散る汗)]」(;゙゚'ω゚')

余りに大きな声の恫喝に、心底驚いた俺は
「ハイ」というふた文字をビックリしすぎて
「ヒャイーッ」と噛んで返事をしてしまっ
た。


-これは、本当やばい事になったぞ!
ヒゲ~ 頼む~
早く 帰って来てくれ~
あ~どうしよう、、、、、、、[あせあせ(飛び散る汗)]
、、、、、[あせあせ(飛び散る汗)]
そうだ! バックヤードに逃げ込もう、、、-




「とっ とりあえず、店長に確認しますので、
少々お待ち頂いて宜しいですか?」


そう言ってバックヤードに行こうと、踵を返した時、後ろから おっちょこちょい顔のチンピラが

「おい アンちゃん!
たこ焼きも頼むわ(笑)」


「、、、、、、[あせあせ(飛び散る汗)]


- クソッ! 柳沢慎吾 似のヘタレ顔がっ!!
調子に乗って たこ焼き なんか注文
しやがって、自分で 屋台でも行って来い!!
バカ野郎がっ!!!-


返事もろくにしないまま、バックヤードに行こうとすると、おっちょこちょい顔のチンピラが、オヤッさんに負けないぐらいの大声で


「わかったなら、返事しろやっっ!![むかっ(怒り)]


「ヒャイーッ[あせあせ(飛び散る汗)]」(>_<)


チンピラのハイトーン恫喝にまたまた、驚いた俺は、またまた「ヒャイーッ」と噛んで返事をしてしまった。(;´д`)


バックヤードに入り、キッチンに両手をついてため息をつきながら考える。


- あ~ 最悪だ~
ど~しよ~[あせあせ(飛び散る汗)][あせあせ(飛び散る汗)]
「ヒャイーッ」って二回も噛んで返事を
しちゃったよ~
人生で、「ヒャイーッ」なんて返事したの
初めてだよ~、、、あ~恥ずかしい[あせあせ(飛び散る汗)]

いやいや、今はそんな事なんかどうでも
いいんだ、この状況をどうする?
あの クソヒゲ まだ帰って来ないし!!
あのヤクザ二人は怖いし~、、、[あせあせ(飛び散る汗)]
どうしよう~、、、、、、[あせあせ(飛び散る汗)]
、、、、、、[あせあせ(飛び散る汗)]
※当時は携帯電話も普及していませんので連絡のしようが無かった



、、、そうだ、もう 逃げちゃおう! !!




ピザとビールを買いに行くふりして
逃げちゃおう!! (°▽°)




だいたい、あのクソヒゲも悪いんだよ!
帰って来るの遅いし、
また、ウィンズに行って 馬券でも買って
いるんだろう!
そんな事ばっかしてるから、いつまでも
結婚出来ないんだよ!!
クソヒゲ!!!
お前が悪いんだぞ!!!!
むしろ俺は被害者だよ( *`ω´) –


そう思って急いでレジに行き、レジの中から
今日のバイト代として、1万円札を一枚抜く

ー んっ? 今 一枚抜いたその下の諭吉さんが
泣いていたゾッ!
お金は寂しがりやだからなぁ~、、、
一緒に連れて行ってあげよう( ◠‿◠ ) –

自分勝手な 言い訳をしながら
迷惑代として、もう1人の諭吉さんをレジから抜き取り、合計2枚の諭吉さんを素早くポケットに押し込み 恐怖の2人の所に行く。

「お待たせ致しました
ピザとビールとたこ焼き買って来ますので
10分ほどお待ち頂けますか?」

と言うと、相変わらず鋭い眼光の オヤッさんがタバコの煙を吐き出しながら

「おう、なるべく早く持って来てくれ!
それから、タバコを買って来てくれ」

「はい、分かりました」

そう言って、店を出ようとした時、

「おうっ アンちゃん!
おめぇ~逃げるつもりじゃね~よな[むかっ(怒り)]?」

「ヘッ? なんでですか?[あせあせ(飛び散る汗)]
((((;゚Д゚)))))))[あせあせ(飛び散る汗)]

「だって おめぇ~、タバコの銘柄確認しないで買いに行こうとするからよ!」

– ( ゚д゚) [あせあせ(飛び散る汗)]、、、[あせあせ(飛び散る汗)]、、、[あせあせ(飛び散る汗)]、、、[あせあせ(飛び散る汗)]
や ・ ば ・ い、、、[あせあせ(飛び散る汗)]



その時、オヤッさんの前に置いてある 灰皿の脇に、セブンスターのパッケージがチラリと見えた。


「セッ セブンスターでいいですか?σ(^_^;)」


「おう~、分かってるじゃねぇか、
アンちゃん」

「では、買いに行って来ます」
Σ( ̄。 ̄ノ) ふ~~っ、、、


2人に背を向けた瞬間、柳沢慎吾 似でおっちょこちょい顔の、田舎の売れないホストみたいなチンピラが、俺の背中に声をかける


「おい アンちゃん! たこ焼きにマヨネーズ
かけてもらってくれ~ 笑」


何も答えず店を出ようとも思ったが、
また 怒鳴られて「ヒャイ~[あせあせ(飛び散る汗)]」なんて
返事もしたくなかったので


「マヨネーズですね!
分かりました ^_^ 」


引きつりながらも笑顔でこたえる



タチの悪いヤクザとチンピラを置き去りにして、店の裏口を出て 錦糸町駅に
ダッシュで向かう。


ε=ε=ε=ε=ε=ε=┌(; ̄◇ ̄)┘


その2へ続きます[あせあせ(飛び散る汗)]

ヽ( ̄д ̄;)ノ=3=3=3


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