もうずっと昔
19歳の時に、喫茶店でアルバイトをしていた時の話
夏のこの時期になると必ず思い出す、
チョット怖かった話
錦糸町駅から歩いて3分程の商業ビルの一階にあるその店は、カウンターに4人、2人掛けテーブル席が2つと、4人掛けテーブルが2つのこじんまりとした店だった。
独身、競馬好きで、髭の似合うダンディな
30代後半の、優しいマスターが1人いて、あとは常にバイトを雇って営業をしていた。
錦糸町という土地柄もあって、個性的なお客さんが、入れ替わり来店するので とても面白く、飽きる事が無かった。
競馬で負けて、スッカラカンなのに店に来て、「お金は無いが腹が減ったから何か食わせろ! その後に皿洗いでもなんでもして、働いて飯代を返す!」と 無茶苦茶な事を言った後、ニコッと笑うと 前歯が全部ない おじいちゃん。
派手な服装で サングラスを付けたまま、入店していきなり、
「人に追われてるの、、、だから アイスコーヒーをお願い!」と 追われているにも拘らず、何故かアイスコーヒーをオーダーする、訳の分からない サスペンス系の熟女が来店したり、とにかく一癖も二癖もある人達が来店する、とても面白いお店だった。
そんな 楽しいバイト先の喫茶店に、その日も個性的なお客さんが来店した。
8月も中旬に入り、お盆の時期を迎えようとしていた週末の日曜日の午後、マスターが食材の買い出しに行ってる間、俺1人で店番をしていると、チンピラ風の男が一人で店にやって来た。
「いらっしゃいませ~」
そう声をかけると、面倒くさそうにこちらに一瞥をくれて、店の一番奥の 4人掛けテーブルに何故か 壁と向き合い、こちらに背を向けて座るチンピラ風の男。
男の顔は、はっきり見えなかったが、体型は中肉中背で特徴がない 、ただチンピラ風でタチが悪そうだという事は分かる。
– なんかヤバそうな奴だなぁ、、、
気を付けないと、なにかしらの因縁を吹っかけられそうだ、、、–
早速 水とおしぼりをトレーに乗せ、メニューを見ているチンピラ風の男が座るテーブルに行き、オーダーを伺う。
「ご注文お決まりでしたら
承りますが、、、」
すると、背を向けていた男が くるりと体をこちらに向けた。
– おっ! チンピラ風の男のわりに 柳沢慎吾に似た、おっちょこちょい顔で、田舎の売れないホストみたいだ(笑)–
そう思っていると、チンピラ風のおっちょこちょい顔の男が、ゆっくりと静かに俺に話しかける。
「アンちゃんよ~、ピザはねーのか?」
声が少しハスキーで、しかもハイトーンなので 余計に 柳沢慎吾に似て見えてくる。
「申し訳ありません。ピザはないですね~
軽食でしたら、サンドイッチやエビピラフ、などがありますが、、、
」
すると、いきなり
「アンちゃんよ~サンドイッチが食いて~んじゃ ね~んだよっ!
ピザが食いて~んだよっ
!」
柳沢慎吾似のチンピラ男が、キレ気味に声を荒げて言う。
「すっすみません、メニューに無いものは、おっお出しできないんですが、、、
」
いくら柳沢慎吾 似のおっちょこちょい顔でも、声を大きくして言われると、こちらも萎縮してしまう。
他にお客さんがいれば、こんなに大きな声も出さないだろうに、今 この店には、俺とタチの悪い おっちょこちょい顔のチンピラと二人しかいない。
–こっこんな時に、誰か別のお客さんが来てくれたらな~
–
そう思っていると、俺の願いが通じたのか 不意に店の扉が開いた。
– やったぞ!客だ!これぞ天の助け!
別の客がいれば、おっちょこちょい顔の
チンピラも、大きな声を出す事も無いぞ!-
そう思って、来店した客に 満面の笑みで
「いらっしゃいませ~~
」と言う。
すると、おっちょこちょい顔のチンピラも俺に負けないくらいの 満面の笑みで
「オヤッさん! ご苦労様です!」
と頭を下げる。
((((;゚Д゚)))))))
- オヤッさん?、、、
チンピラの知り合い?
てか もろ組の人
てか もろ極道じゃん
-
おっちょこちょい顔のチンピラが、“オヤッさん” と満面の笑みで言った相手は、背が高く恰幅のいい安部譲二によく似た男で、
どこからどう見ても
“ざ・やくざ ”
フランス風に言うと
“La・ヤクザ ”
だった、、、
(;゙゚'ω゚'):
ザ・ピ ン チ、、、
-この状況で ボスキャラの登場はマズイ!
早く ヒゲのマスター 帰って来てくれないか
な~!!
チクショー 何でこんな時に、店に居ないん
だよ!!
あの ヒゲ 野郎!!–
そう 心の中でマスターに毒突いていると、
オヤッさんと呼ばれる、安部譲二に 似た男をチンピラ男が、自分の居る席に案内していた。
とりあえず、水とおしぼりを再び奥の席に持って行くと、おっちょこちょい顔の柳沢慎吾似の男が、オヤッさんに告げ口をするように言う
「オヤッさん、この店 ピザが 無いそうなんっすよ~」
渋々と告げる。
- えっっ!ピザって、、、
オヤッさんが 食べたかっ たの?、、、
( ゚д゚)
この 360度 どの角度から見ても
“ざ・やくざ ” な オヤッさんが食べたかっ
たの?、、、
–
( ゚д゚) や ・ ば ・ く ・ ね ?-
俺の心中を察したのか、オヤッさんは 俺に鋭い眼光を向けて静かに言う、
「無きゃ~買って来いよ、、、」
- ゲッ!
何 この低く響く声!
声は中尾彬にそっくりじゃねーか!!
見た目は 安部譲二で声が中尾彬って、
ドラマや映画でもなかなか出てこない、
相当クオリティーの高い “やくざ”だよ
-
「あと、ビールくれ
アサヒのスーパードライ、、、」
「あの、、、(・_・; すみません、ビールは
キリンのラガーか一番搾りしか置いてないんですが、、、
」
「、、、無きゃ~買って来いよ、、、」
鋭い眼光で睨みを利かせながら、中尾彬ばりの声で静かに言う。
- 買って来いって、そんな無茶苦茶なっ!
だいたい、ピザが食べたいなら、ピザ屋
に行けばいいし、ビールが飲みたければ
こんな喫茶店じゃなくて、居酒屋にでも
行けばいいじゃねぇかっ!! -
と 思いっきり言いたかったが、当然 言う事なんか出来ずに、答えに困っていると
突然、オヤッさんが大きな声で
「わかったら、早く持って来いやっっっ!!
」
「ヒャイーッ
」(;゙゚'ω゚')
余りに大きな声の恫喝に、心底驚いた俺は
「ハイ」というふた文字をビックリしすぎて
「ヒャイーッ」と噛んで返事をしてしまっ
た。
-これは、本当やばい事になったぞ!
ヒゲ~ 頼む~
早く 帰って来てくれ~
あ~どうしよう、、、、、、、
、、、、、
そうだ! バックヤードに逃げ込もう、、、-
「とっ とりあえず、店長に確認しますので、
少々お待ち頂いて宜しいですか?」
そう言ってバックヤードに行こうと、踵を返した時、後ろから おっちょこちょい顔のチンピラが
「おい アンちゃん!
たこ焼きも頼むわ(笑)」
「、、、、、、
」
- クソッ! 柳沢慎吾 似のヘタレ顔がっ!!
調子に乗って たこ焼き なんか注文
しやがって、自分で 屋台でも行って来い!!
バカ野郎がっ!!!-
返事もろくにしないまま、バックヤードに行こうとすると、おっちょこちょい顔のチンピラが、オヤッさんに負けないぐらいの大声で
「わかったなら、返事しろやっっ!!
」
「ヒャイーッ
」(>_<)
チンピラのハイトーン恫喝にまたまた、驚いた俺は、またまた「ヒャイーッ」と噛んで返事をしてしまった。(;´д`)
バックヤードに入り、キッチンに両手をついてため息をつきながら考える。
- あ~ 最悪だ~
ど~しよ~
「ヒャイーッ」って二回も噛んで返事を
しちゃったよ~
人生で、「ヒャイーッ」なんて返事したの
初めてだよ~、、、あ~恥ずかしい
いやいや、今はそんな事なんかどうでも
いいんだ、この状況をどうする?
あの クソヒゲ まだ帰って来ないし!!
あのヤクザ二人は怖いし~、、、
どうしよう~、、、、、、
、、、、、、
※当時は携帯電話も普及していませんので連絡のしようが無かった
、、、そうだ、もう 逃げちゃおう! !!
ピザとビールを買いに行くふりして
逃げちゃおう!! (°▽°)
だいたい、あのクソヒゲも悪いんだよ!
帰って来るの遅いし、
また、ウィンズに行って 馬券でも買って
いるんだろう!
そんな事ばっかしてるから、いつまでも
結婚出来ないんだよ!!
クソヒゲ!!!
お前が悪いんだぞ!!!!
むしろ俺は被害者だよ( *`ω´) –
そう思って急いでレジに行き、レジの中から
今日のバイト代として、1万円札を一枚抜く
ー んっ? 今 一枚抜いたその下の諭吉さんが
泣いていたゾッ!
お金は寂しがりやだからなぁ~、、、
一緒に連れて行ってあげよう( ◠‿◠ ) –
自分勝手な 言い訳をしながら
迷惑代として、もう1人の諭吉さんをレジから抜き取り、合計2枚の諭吉さんを素早くポケットに押し込み 恐怖の2人の所に行く。
「お待たせ致しました
ピザとビールとたこ焼き買って来ますので
10分ほどお待ち頂けますか?」
と言うと、相変わらず鋭い眼光の オヤッさんがタバコの煙を吐き出しながら
「おう、なるべく早く持って来てくれ!
それから、タバコを買って来てくれ」
「はい、分かりました」
そう言って、店を出ようとした時、
「おうっ アンちゃん!
おめぇ~逃げるつもりじゃね~よな
?」
「ヘッ? なんでですか?
」
((((;゚Д゚)))))))
「だって おめぇ~、タバコの銘柄確認しないで買いに行こうとするからよ!」
– ( ゚д゚)
、、、
、、、
、、、
や ・ ば ・ い、、、
–
その時、オヤッさんの前に置いてある 灰皿の脇に、セブンスターのパッケージがチラリと見えた。
「セッ セブンスターでいいですか?σ(^_^;)」
「おう~、分かってるじゃねぇか、
アンちゃん」
「では、買いに行って来ます」
Σ( ̄。 ̄ノ) ふ~~っ、、、
2人に背を向けた瞬間、柳沢慎吾 似でおっちょこちょい顔の、田舎の売れないホストみたいなチンピラが、俺の背中に声をかける
「おい アンちゃん! たこ焼きにマヨネーズ
かけてもらってくれ~ 笑」
何も答えず店を出ようとも思ったが、
また 怒鳴られて「ヒャイ~
」なんて
返事もしたくなかったので
「マヨネーズですね!
分かりました ^_^ 」
引きつりながらも笑顔でこたえる
タチの悪いヤクザとチンピラを置き去りにして、店の裏口を出て 錦糸町駅に
ダッシュで向かう。
ε=ε=ε=ε=ε=ε=┌(; ̄◇ ̄)┘
その2へ続きます
ヽ( ̄д ̄;)ノ=3=3=3