ビートたけしと大杉蓮
30代前半  沖縄県
2018/03/02 21:55
ビートたけしと大杉蓮
TVタックル収録日の休憩中での事。

たけしのマネージャーが、血相変えて、たけしのもとへ走って来た。

「殿、今連絡が入ったんですが、

大杉蓮さんがお亡くなりになったそうです...」



訃報を聞いた、たけしはキョトンとした顔でこう答えた。

「ん? 大杉蓮? 誰それ?

大杉蓮さんって、オイラの知ってる人?」



マネージャーはそれ以上何も言えなかった。

その後、番組の収録は再開された。

しかし、そこからのたけしは一言も発さず、只々、呆然としていた。

まるで、刻が止まったかの様に...。



たけしと大杉蓮との出会いは、25年前。

北野映画のオーディション。

「これでダメなら役者はもうやめよう」

40を過ぎて鳴かず飛ばずだった大杉蓮は、最期の望みをかけてオーディションで挑む...はずだった。

しかし、よりによって、その勝負の日に遅刻してしまったのだ。

急いでオーディション会場に駆けつけた蓮。

すると視線の先には、関係者と談笑している北野監督がいた。

蓮にとって、たけしは特別な存在だった。

役者として陽が当たらない時代、たけし作詞作曲の「浅草キッド」を何度も聴いては、自らを励ましていたからだ。

「今日は申し訳ありませんでした...」

恐る恐る小声で詫びを入れる蓮。

本来は大声で謝罪せねばいけないところを、たけしを敬愛するあまり、小声になってしまったのだ。

ペコリと、頭を下げる蓮。

たけしは、そんな蓮に対して、こう言った。

「もう、帰っていいよ...」



「落ちた...終わりだ...

よりによって、俺は何でたけしさんのオーディションに遅刻なんか...」

蓮の頭の中は、後悔でいっぱいだった。



「あの人、使うから...」



「え? でも、たけしさん、

あの人、遅刻して来たんですよ?

それに役は、もう埋まってますよ」



「うん、でも、使うから...」



本当なら、オーディションに遅刻して来た大杉蓮は、不合格だった。

それに、配役はすべて決まっていた。

しかし、たけしのひと声で、急遽、シナリオが書き換えられ、蓮は役を与えられた。



たけしは、後に、インタビューで「自身の映画で使う俳優について」こんな事を話していた。

「オイラね、いかにも自分は主役って態度してる俳優は好きじゃない

それよりは、気の弱そうな、申し訳なさそうにしている人がいい

そういう人にチャンスをあげると、それ以上のモノを返してくれるから

こっちが与えた役を有り難いって思ってくれる人がいいよね」



大杉蓮は北野映画の常連となり、日本を代表する名俳優となっていく。

その役幅は広く、

ある時は、死に場所求める身体障害者。

ある時は、お茶目で頼りない上司。

また、ある時は、強面のヤクザ。



その後も蓮は映画やドラマだけではなく、バラエティなどにも出演。

そのダンディな容姿と、気さくな性格で、多くの共演者やスタッフから愛された。



昨年、たけしと揃って「ぴったんこカンカン」に出演。

司会の安住アナも一緒に3人で浅草をぶらり旅。



「俺、初めて、監督とキャッチボールするよ!!」

蓮は、子供の様にはしゃぎながら、河原でたけしとキャッチボールをした。

番組の後半では、酒を酌み交わしながら、思い出話しに花を咲かせ、

蓮が演奏するギターで、たけしが「浅草キッド」を熱唱した。

そう、たけし作詞の「浅草キッド」は、俳優大杉蓮を支え続けた歌だ。



それから4ヶ月後。

たけしと安住アナは「ニュースキャスター7Days」に出演。

冒頭、冬季オリンピックのメダル獲得で明るい話題。

いつも以上に安住アナが明るく振舞っているのがわかった。

たけしも、妙にハイテンションな安住アナに思わず笑みがこぼれていた。

安住アナは、この後「触れなければならないニュース」の事を少しでも、たけしの頭から消したかったのかもしれない。

そして、大杉蓮訃報のニュースへ。

4ヶ月前の「ぴったんこカンカン」のVTRが流れた。

河原でのキャッチボール...

3人での乾杯...

浅草キッドの歌唱...

目をパチパチしながら、VTRの蓮を見つめるたけし。

映像が終わると、スタジオには静寂が流れた。



「寂しいですね...」

安住アナがそう言うと、たけしは小さく頷いた。

「うん...」

そして、こう話し始めた。

「同じような人が世界中にいっぱいいるからしょうがない...

だけど、やっぱり人間っていうのは自分の近い人の死とかは堪えるね...

父親とか母親とか死ぬのこたえるのと同じように...

友達や長い関係がある人がなくなると、相棒がいなくなったような寂しさがあるよね...

縁があって自分の映画を支えてくれた人だからね...

今ごろ何してるんだろう...」

そう言うと、たけしは目柱を抑えた。



大杉蓮は、以前にある番組でこんな言葉を言っていた。

「自分は北野監督によって命を与えられた」

そう、あの日、遅刻したあのオーディションで...

敬愛する、たけしと出会ったあのオーディションで...




ゆうきです。

オレが初めて大杉蓮さんを知ったのは、たけしさんの映画「HANABI」でした。

それから、同じサッカー好きという事で、親しみを感じました。

ダンディな見た目とは違って、一旦サッカーを話し始めたら、止まらなくなるところが、面白く、

オレの中では、強面な俳優から、一気にお茶目なオッチャンといった印象に変わりました。

そこからは、映画やテレビに出ているのが、当たり前な有名俳優で、いろいろな役柄をされていましたね。

あるドラマで、オカマ役をやった時には、笑ってしまいました(笑)

40歳を過ぎて、ブレイクした遅咲きの方で、若い頃はかなり苦労されと後で知りました。

オレの中では、いつまでも「しぶく、面白く、最高にカッコいい」そんなオッチャンです。

お悔やみは申し上げません。

最後に、下積み時代の蓮さんが、聴いていたという「浅草キッド」の歌詞を。

きっと、今でも、たくさんの売れない俳優や芸人が、この歌を聴きながら、夢という人生を生きているんですね。



浅草キッド
作詞 ビートたけし

お前と会った仲見世の
煮込みしかないくじら屋で

夢を語ったチューハイの
泡にはじけた約束は

灯の消えた浅草の
コタツ1つのアパートで

同じ背広を初めて買って
同じ形のちょうたい作り
同じ靴まで買う金は無く

いつも 笑いのネタにした
いつかうれると信じてた

客が2人の演芸場で
夢をたくした100円を
投げて真面目に拝んでる

顔にうかんだおさなごの
むくな心にまたほれて

1人たずねたアパートで
グラスかたむけなつかしむ

そんな時代もあったねと
笑う背中がゆれている

夢はすてたと言わないで
他にあてなき2人なのに

夢はすてたと言わないで
他に道なき2人なのに

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コメント

30代前半  沖縄県

2018/03/02 23:01

2.  >>1 しゃーれんちさん
こちらこそ、
コメントありがとうございました[にこにこ]

40代半ば  沖縄県

2018/03/02 22:59

1. 言葉が出ません、ありがとうございました!

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