薔薇は美しく散る その9
30代半ば  福岡県
2011/06/16 20:06
薔薇は美しく散る その9
『テュイルリー公園』

ルーブル美術館の西側に位置する公園。19世紀までは宮殿があり、そこには広場がありました。

1789年7月13日、アンドレはこの広場付近で撃たれます・・・

では、その時とそれからの状況を想像してみましょう・・・

・・・空は、まるで血で染められたように朱かった。

川沿いを、共に市民軍についた衛兵隊を率いて進む、オスカルとアンドレ。

橋のたもとに差し掛かり、橋の上に向かう階段を昇ろうとした時、国王軍の見張りと鉢合わせ。

先頭のオスカルは、その見張りとほぼ同時に銃を撃った!

オスカルの弾は、見張りに命中。

敵の狙いは、大きくオスカルを逸れたが…

「隊長ー!!」

衛兵隊員の叫び声に振り向くオスカル。

するとそこには、血の滴る左胸を押さえ、両脇を衛兵に支えられるアンドレの姿が!!

「アンドレ…」

アンドレは、オスカルの方へ右手を伸ばしながら1歩…2歩、

「オ…ス…カル……」

そして、ばったりと倒れた。

「アンドレ…」

駆け寄るオスカル。

「アンドレ…、アンドレ!アンドレーーーっ!!」


夕暮れの、荒れたパリの町を、ひたすら馬を飛ばすオスカルたち。

先頭を行く白い馬のオスカル、その後に、アンドレを抱えた衛兵の馬が続く。

「アンドレ、頑張れよ!もうすぐ医者に診せるからな!」

衛兵の言葉にも、アンドレの反応はない…

オスカルは、何度もアンドレの方を振り返りながら、必死に馬を走らせた。

と、目の前に国王軍の鉄砲隊の列が!!

「ひるむなー!中央を突破せよーーー!!」

そう叫んで、隊列に突っ込んでいくオスカル。

国王軍は、一斉に発砲!

しかしオスカルたちは、その弾の雨をものともせず、国王軍の兵士たちを蹴散らしながら、中央を走り抜ける。

「道を開けろ!!どけ、どけ、どけーーっ!!」

重傷のアンドレを乗せたアランの馬を守りながら、衛兵隊員たちは、包囲網を突破する。

アンドレを死なせてはならない…

血を吹くアンドレの胸の傷は、オスカルを逆上させていた。

降り注ぐ銃弾の中を、オスカルは走る。

アンドレを助けるためならば、もう怖いものなんかない! 

なんとかオスカルたちは、市民軍の基地へと戻ってきた。

「衛兵隊だ!衛兵隊たちが帰ってきたぞ!」

市民軍の見張りが、ガレキの上から皆に叫んだ。

「えっ?」

こんなに早く戻る予定ではなかったのに…

と、ロザリーはじめ、皆が、心配そうにオスカルたちを出迎える。

皆が取り囲む中、アンドレをそっと道に敷いた毛布に寝かすオスカル。

「アンドレ…?」

ベルナールが駆け寄る。

「ベルナール、すまないが急いで医者を…」

オスカルは、苦しそうに息づくアンドレに顔を近づけた。

「しっかりしろ、アンドレ。もう安心だ!もうすぐ医者が来る。」

アンドレは、荒い呼吸の中、もうほとんど視力のない右目で、必死にオスカルの顔を見ようとしていた。

ベルナールが、ガレキの上に飛び乗って叫んだ。

「みんな聞いてくれ!元衛兵隊員、アンドレ・グランディエが、重傷を負って帰った来た!誰でもいい…、医学の心得のある者は名乗り出てくれ!急ぐんだ!何が何でも仲間を一人助けたい!!」

すると、一人の男が、すぐに前に進み出た。

「私はグラビディリ地区の開業医だ。けが人を診よう。」

そしてもう一人、

「私も力になろう!外科は専門だ!」

2人だけではなかった。

民衆の中からアンドレのために、10人を越える医者が名乗り出た。

だが… 

夕陽の沈みかけた空に、教会の鐘が鳴り響き、真っ白なハトの群れが、家路を急ぐかのように飛んでいく。

担架に乗せられ、協会の近くの仮設ベッドに運ばれたアンドレは、空をじっと見ていた。

「日が…日が沈むのか…オスカル…」

「うん、今日の戦いは終わった…。
もう銃声ひとつしないだろ…?」

オスカルは、やさしく、そしてささやくように答えた。

「ハトが…ネグラに帰ってゆく…音がする…」

おおきくうなずいてみせるオスカル。

ベルナールが、アンドレを診た医者にそっと尋ねた。

「どうですか?アンドレのケガは…」

「弾は心臓を真っ直ぐに貫いている…まだ息があるのが不思議なくらいです…残念ですが、もはや手の施しようが…」

医者は、そう言ってうなだれた。

ベッドの横にひざまづくオスカルの方へ、アンドレが、ゆっくりと手を伸ばした。

その手を、しっかりと握りしめるオスカルの目から、大粒の涙がこぼれた。

「…どうした、オスカル…。何を泣いている…?」

「アンドレ…、式を挙げて欲しい。
この戦いが終わったら、私を連れて地方へ行って、どこか田舎の小さな教会をみつけて…
そして、結婚式を挙げて欲しい…。
そして神の前で、私を妻にすると、誓って欲しい…」

オスカルは、もはや軍人ではなく、ひとりの…男を愛するただの女になっていた。

握ったアンドレの手を、涙で濡れた自分の頬に押し付け、オスカルは目を閉じた。

「もちろんだ…そうするつもりだよ、オスカル…
そうするつもりさ…
でも、オスカル…何を泣く?なぜ泣くんだ…
オレはもう…ダメなのか……?」

ハッとするオスカル…、黙って見守る民衆や衛兵たち。

「…何をバカなことを!アンドレ!!」

オスカルの強い言葉に、アンドレは少し安心したように微笑んだ。

「そうだね…そうだ…そんなはずはない…
すべては、これから始まるんだから…
オレと…おまえの愛も…
新しい時代の夜明けも…
すべてが…これからなんだもの…
こんな時に、オレが死ねるはずがない…
……死んで……たまるか…………」

アンドレの目から、一筋の涙が流れ落ちた。

「いつかアラスへ行った時、2人で日の出を見た。
あの日の出を、もう一度見よう、アンドレ。
あの素晴らしかった朝日を…2人で。
2人で、生まれてきて…、出会って…、そして生きて、本当によかったと思いながら…」

オスカルはそう言って、もう一度アンドレの手を、自分の頬に押しつけた。

しかし…

「……!!…アンドレ……アンドレ!」

…アンドレの唇は、もう二度とオスカルの名を呼ぶことはなかった。

ぼう然と立ち上がり、アンドレを見つめるオスカル。

ベルナールの胸に泣きくずれるロザリー。

帽子をとって頭を垂れるアラン。

すっかり日の暮れた教会の広場で、そこにいた人々すべてが、深い悲しみにくれた。

紫色の空に、星がひとつ、ふたつ…尾を引いて流れる…

悲しい沈黙が、広場全体を覆っていた。

やがて、強い風がアンドレに掛けられていた毛布を巻き上げるほどに揺らした時、オスカルの体の中から、堪えていたものが一気に外へ噴き出した。

「アンドレーーーーーーーっ!!
私を、置いていくのかーーーーーっ!!
ああああ…ああああああ…」

人目をはばからず、オスカルは泣き叫んだ。

「あああ…アンドレーーー、ああああ…」


・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・

・・・それでは、『愛の光と影』を(動画ERRORが出てますが、音声のみです。そのまま再生してください。)

愛が苦しみなら

いくらでも苦しもう

それが君の心に

いつか届くまで

君は光僕は影

離れられない二人の絆

苦しめば苦しむほど

愛は愛は深まる

「愛しても愛と呼べない

僕の目はもう君を見ることが出来なくなる

あぁオスカル オスカル!」

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コメント

30代半ば  福岡県

2011/06/22 10:06

30. >聖子さん

大変な作業のような・・・

苦労されてるように思います。

70代以上  香川県

2011/06/22 1:08

29. >ジュンくんさん

小高い[富士山]から見るといいらしいですが[あせあせ(飛び散る汗)] 
地元のボランティアさんが、砂を直しているそうです[るんるん]

30代半ば  福岡県

2011/06/22 0:28

28. >聖子さん

・・・あれは、すぐ近くで見ても、わからないかも・・・

遠くから見るから、綺麗なのでは・・・

70代以上  香川県

2011/06/21 22:39

27. >ジュンくんさん

地元なのに良く知らないから、一度行きたいです[るんるん]

30代半ば  福岡県

2011/06/21 7:56

26. >聖子さん

童話の里じゃないですか。

メルヘンチックで、いいですね。

70代以上  香川県

2011/06/21 0:47

25. >ジュンくんさん

よくご存知で[グッド(上向き矢印)]
西(愛媛に近い方)の、観音寺市にあります。
小さい頃に行ったきりですが[あせあせ(飛び散る汗)] 
西讃には、「浦島太郎伝説」があり、高松近辺には「桃太郎伝説」があります[るんるん] きびだんご=岡山なんですがね(笑)

30代半ば  福岡県

2011/06/20 18:25

24. >聖子さん

『寛永通宝(?)』みたいな、砂でできた公園みたいなところは、どちらでしたかね?

70代以上  香川県

2011/06/20 6:41

23. >ジュンくんさん

たいした事ないんですよ[冷や汗]

基本的に、私はどこでも何でも楽しめるヤツだから…[うれしい顔] 
私が思うだけです[あせあせ(飛び散る汗)]

30代半ば  福岡県

2011/06/20 0:11

22. >聖子さん

・・・そのオススメとは?

気になるなぁ~

70代以上  香川県

2011/06/19 23:08

21. >ジュンくんさん

なかなかいいプランですね[グッド(上向き矢印)]
日程にもよるけど…[あせあせ(飛び散る汗)]

高知のはりまや橋は、ホントにびっくりするくらい、ちゃっちいので[たらーっ(汗)]
それよりも、桂浜に行って「坂本龍馬さんの銅像」を見て下さい[わーい(嬉しい顔)] 

鳴門の渦潮[台風]は、時間を調べておいた方がいいです[ぴかぴか(新しい)]
時間の余裕があり、絵画がお好きなら「大塚美術館」もオススメです[わーい(嬉しい顔)] 

香川は…[あせあせ(飛び散る汗)]それくらいかな?
個人的にはオススメがあるけど、一般的でないと思います[冷や汗]

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