私は嫌韓論者ではない。
もちろん親韓でもないが、自分の生活信条と同じく「仲良くできる相手とは仲良くしておくのが賢明」だと考えている。
そんな私から見ると、「徴用工判決」は論外としてもレーダー照射事件や天皇謝罪要求などは少し政府が過剰に反応し過ぎなのではないか、と正直感じていた。

文在寅政権が「反日」的立場を掲げるのは支持基盤である革新派に対して「反日＝自主独立」の気風としてウケがよいからだ。
政権の支持率が低下しているときに「反日」の名の下に支持層の結束を高めたいのだ。
折からの「三・一運動」(1919年3月1日に生じた抗日独立運動)からちょうど100年、革新政府にとっては絶好の機会というわけだ。

ところで、徴用工問題にせよレーダー照射事件にせよ、国際社会では韓国の主張は全く相手にされていない。
一度解決済みとされた案件を蒸し返しただけの徴用工判決は世界の常識では問題外のことであり、まともに論じる必要もない次元の問題なのだ。
本来であればこのように低次元の問題にマジメに相手をする必要はない。
その是非が誰の目にも明らかな主張は放置、黙殺しても害はなく、相手するだけ無駄にエネルギーを浪費するだけのはずだ。
不当な主張に対して抗議をするのは当然としても、いささか抗議のトーンが高すぎる、と私は感じていた。

先日、中央日報の社説を偶然読んだ。
中央日報とは韓国の３大新聞社の１つ、サムスン財閥の系列でありどちらかといえば右派、保守系、日本で言えば日本経済新聞や産経などに近い。

記事は【時視各角】ベネズエラの悲劇が韓国に与えた教訓
https://japanese.joins.com/article/452/244452.html
昨年8月に出されたもので、ベネズエラの失政と悲惨な現状をもとに現政権が抱える危険に警鐘を鳴らしている。

ベネズエラは世界一の石油埋蔵量を誇る国であり20世紀末までは南米一の富裕国だった。
それが社会主義に心酔し経済に無知なチャベルが大統領となったせいでその後あっと言う間に世界の最貧国の１つに転落してしまった。
この政権が掲げたのが「所得主導」型の成長政策、まず民衆の所得を最優先にするという発想で当初は民衆に熱狂的に支持された。
その理念で最低賃金を上げ、失業者を減らすために公務員を増員、そして企業の国有化を進めた。

ところが経済の実態に見合わない賃金上昇と雇用拡大はインフレを生じ、事業を国が没収してしまう政策は企業の意欲を奪い、経済は空回りするだけだった。
インフレが急速に進む中で国民の労働意欲が失われればどうなるか、想像に難くない。
チャベルから現政権マドゥロに代わっても基本政策は変わらず、今では犯罪率世界一、国民の１割が国外に逃散してしまう「地獄」である。

文在寅政権が掲げるのも最低賃金上昇を主眼とする「所得主導政策」である。
最低賃金を上げて貧困層の所得を増やし貧富の格差を是正する、この発想は間違ってはいない。
ただ最低賃金は経済の実態に見合ったものでなければ雇用にブレーキをかけるだけだ。

たとえば、最低賃金が時給1000円になれば、企業が1時間に1000円の利潤を上げない労働者を雇うことはできない。
1時間に1000円の利潤を得られない事業は存続できない。
経済の実態を超える最低賃金を設定すると企業が潰れ失業率が上がるだけなのだ。

こんなバカげた政策を掲げていては本当に韓国経済が潰れてしまう、この社説はこのことに対する強い警鐘である。

さて、ここから先は私の想像と憶測である。
正しいかどうかは自分でもわからない。

もしこの社説の通りであったとしても、一国の政府が他国の内政、特に経済政策に意見するのはタブー、これは国際社会の常識でもある。
だが韓国は日米中国には及ばぬまでも、GDP世界11位の「経済大国」である。
その経済規模は経済危機でEUを震撼させたギリシャのような小国の比ではない。

その大国が経済危機に見舞われたらどうなるか。
日本はもちろん世界中の力をもってしても救済は難しい。
そして、当然隣国である日本にも甚大な被害が及ぶ。

その来るべき被害を最小限にしたいなら何をすべきか。
距離を置くこと。
これが最も無難な答えだ。

私はここまで考えてやっと今の日本政府が韓国に対立姿勢を鮮明にしている真相が理解できた気がした。

今日、同じ韓国の中央日報から新しい社説が出された。
【コラム】優しい政権を越えて賢い政権に＝韓国
https://japanese.joins.com/article/675/250675.html

言葉は穏健だが、文在寅政権に対してもっと賢明になることを強く求める警鐘である。
コトは感情的な日韓の小競り合いではない。
無知蒙昧な政権によって韓国経済自体が沈没の危機に瀕している、我々はもっと冷静に隣国の本当の危機を認識することが必要だ。