背筋が凍った物語 2
50代後半  北海道(道央)
2011/07/31 19:31
背筋が凍った物語 2
私は本来幽霊や怪奇現象などを信じるほうではないが、
この日は日中にもかかわらずなんとなく不気味になり、引き上げようと考え始めた。

そこへ小太りの女性が通りかかった。なんとなく私のほうへ近づいて来る。
年はひいき目に見ても30代、Tシャツにジーンズ、サンダルばき、
こちらもヨレヨレの普段着、シーンズの上におなかのぜい肉が乗っかっている。

「こんにちは」
私にはまさかこの人が待ち合わせの相手とは思えなかった。
もしそうならどう断ろうか、思案していると
「やっぱダメかぁ…」
と彼女は独り言のように言いながらやはりそのまま去って行った。


私は去って行く彼女を目で追いながらますます不気味になった。
最初に登場した女の子とは二言三言言葉を交わしたが、今の女性に私は言葉を返していない。
これが舞台劇であれば、ベンチにいるのは私でなく人形でもよかったわけだ。

…まるでゴーストタウンのように人の気配がない町…
…湧いて出るように突然目の前に出現した少女…
…そして「ひとり芝居」をするがごとく私の前を通り過ぎていった女性…

そもそも常識的に考えてベンチで携帯をいじっているおじさんに声をかけて来る女の子がいること自体が不自然だ。

…これはさっさと退散したほうがよさそうだ…

そのとき、
「こんにちは! …っと」
またもや声と同時に女の子が現れ私の横に座った。
さっきの女の子だった。
「さっきの人と約束したの?」
「代わりに私じゃどうかなぁ?」
「ダメ?」

矢継ぎ早に言われ私はまた頭の中が大混乱してきた。
取りあえず相手の素性を尋ねると18歳の高校生、
すぐ近くに学校があり帰宅したが退屈だったのでまた出て来たところだとのこと。
「あれが学校だよ」
そう言いながら彼女は団地の向こうの緑のフェンスを指差した。

私が「待ち合わせしたのは普通の約束じゃなくって…」と言うと、
「わかってるよ、エンでしょ?、条件は?」

彼女は前屈みになり顔をくっつきそうなほどに近づけてきた。
胸元に小ぶりながら谷間がのぞく。
スカートから白いパンティが見える。
これは挑発しているつもりなんだろうな、と思いながら
それよりも背後から近づいてきたはずのこの子の足音がしなかったこと、
息づかいなどの気配をまったく感じなかったことの不気味さが印象を決定づけていた。

…この子、いや、これは人間の形をした「なにか」だ…
…やめよう、ここは退却あるのみだ…
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