放射能と風評 ~ まず正しく理解しよう
発端は福島の児童が幼稚園の入園を拒否された事件だろうか。
放射能の風評によって被曝地域の住民が今も苦しんでいる。
それをテーマにした日記を何編か読んだ。
多くの日記に書かれていることはおおむね正しい。
一方で風評の怖さを考えさせる意見も小数ながら目につく。
なぜ間違った風評が広まるのか。
事実を正しく理解している人が少ないからだ。
ここでは私なりに放射能と放射線についてできるだけわかりやすく解説してみたい。
放射線とは一般にα線、β線とよばれる粒子波とX線、γ線などの電磁波を指す。
α線などの粒子線は本当に有害だが短時間、短距離を移動するうちに吸収されすでに二次放射線源となっているのでここでは電磁放射線のみについて述べる。
電磁波とは要は光の仲間であり、波長の長いものから電波、赤外線、可視光、紫外線、X線、γ線と呼ばれるが実体は同じものである。
実は物理学ではこれら電波や光も引っくるめて「放射線」というのだが、混乱してはいけないのでここでは一般的な呼称に従う。
さて、物質によっては放射線を当てるとそのエネルギーを吸収し、後に吸収した放射線を放出することがある。
この放射線を吸収、放出する能力を「放射能」と呼ぶ。
一番身近な例を挙げると目覚まし時計の文字盤などに使われる夜光塗料がそうだ。
これは明るい所で照射された光を吸収し、暗い所で吸収したエネルギーを光として放出しているのだが、
光も放射線の一種とする物理学の立場で言えば夜光塗料には「光」の「放射能」があるということだ。
X線やγ線などの放射線はエネルギー量が多いためさまざまな物質にこの「放射能」を与えてしまう、これが放射能汚染の正体である。
ところで放射線が人体に有害なのはなぜか、その傷害機序は1つではないが最も重要なのは遺伝子(DNA)の損傷である。
人間の体は絶えずその細胞を作り替えながら生命を維持しているが、この細胞を作るための設計図に相当するものがDNAだ。
放射線はこのDNAを焼き切ってしまう。
設計図が破損してしまうと細胞を作り直すことができなくなってしまう。
もしくは機能のおかしな細胞が作られてしまう。
増殖の制御がおかしくなった細胞ががん細胞だと考えればよい。
ここまで読むと放射線というものは何とも怖いものと思うかもしれない。
だが、実は自然界にも放射能は少なからず存在するし人間は年に数回レントゲンの検査を受けたくらいでは何ごとも起こらない。
これはなぜか、DNAは2本の鎖が平行につながった構造をしており、片方が切れてももう片方が残っていれば自然に再結合して自動修復される、
日常少量ながら放射能に囲まれて生きている地球上の生命体は微量の放射能には耐えられるように作られているのだ。
ここで、もう一度夜光塗料に話を戻そう。
夜光塗料の発する光では部屋を照らすどころか手元に近づけても本を読むことすらできない。
つまり放射能というものは浴びた放射線よりも桁違いに少ない放射線を発する能力でしかない。
人が吸収し蓄えている放射能はその人が浴びた放射線の数千分の1、数万分の1に過ぎない。
放射能は感染症と違い、ウイルスのように体内で増幅されることはない。
内部被爆ということばがあるが被爆の原理は同じであり、被爆によって蓄えられる放射能には生物学的濃縮なども起こらない。
したがって現に生きている人の蓄えている放射能はその全量を自分の身で吸収したとしても何ごとも起こることはないのだ。
ここまで読んでまだ「放射能汚染地域に住んでいた人は怖い」と思う人はどのくらいいるだろうか。
風評の怖さは無知の怖さである。
誤った風説を克服するには正しい知識を広める以外ない。
日頃下らないエロ日記ばかりを書いているU助であるが、この放射能の風評は私の書くエロ日記と同じくらい下らないことだと思う。
こんな馬鹿げたことで盛り上がることがないように1人でも多くの人が正しい知識を身につけることを望みたい。
ご意見、反論をお待ちしております。
コメント
2012/03/10 0:16
22. >シンさん
こんばんは。
その通り、長期間放射線活性を維持しやすいα線は体内に取り込まれると問題になりますね。
一方で物理学的半減期が長いということは放射線活性が低い(だから長持ちする)ということでもあり、周囲へのリスクはきわめて少ないと思います。
放射能の活性(時間あたりの放出エネルギー)と半減期(放出エネルギーの持続時間)は当然反比例するのですが、そのあたりの基礎知識を理解せずに盲目的に怖いとする人が多いのも風評被害の原因の1つでしょうね。
返コメ
2012/03/09 23:11
21.
こんばんは。
確かにガンマ線(エックス線)は放射線の中
では遮蔽しにくいし、やっかいですが
、体内に取り込んだ放射性物質による
アルファ線やベータ線の方が問題かな、と思
います。
その際、物理的半減期や生物学的半減
期を考慮しなくちゃいけませんが、そ
もそも個人が取り込んだ放射性物質の
量で、当人以外にリスクがあるのか?
と思います。
返コメ
2012/03/09 20:44
20. >うるおさん
コメントありがとうございます。
サイエンス誌はどうしても正確な知識を盛り込むため一般読者向けであってもやや突っ込んだ内容になってしまいますよね。
私の書いたものはあくまでも知識の1断面でしかありませんが、逆に教養を深めるために書いたわけでもないので、思い切って2、3の断片的なことだけに絞ってみました。
私もニュートンなどは今もときどき読んでいます。
返コメ
2012/03/09 18:56
19. 初コメです〓
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夜光塗料の例えは本当に分かりやすかったです
高校時代に月刊サイエンスで読んだ覚えがあるんですが
そん時にイマイチ理解できなかったことが
夜光塗料のお陰でスッーと頭に入りました
誤解を恐れずに言えば月刊サイエンスに掲載されている記事より
読者に伝わる内容だと思います
本当にありがとうございました〓
返コメ
2012/03/09 6:18
18. >琴洙吉さん
食べ物に関しては難しいところです。
食材自体が保有している放射能がそれが浴びた放射線よりも圧倒的に少ない量でしかないのは「夜光塗料」と同じですが、それを食べたときの安全性に関するデータが乏しいのが問題です。
私個人としては農産物に対する出荷規制の多くは半ば風評被害的な要素が大きいと考えていますが、何をどの程度食べると危険というような統計がないので、逆にどこまで安全ということもできない、科学の歯痒さを感じさせますね。
返コメ
2012/03/09 4:09
17. 強い放射線を浴びつづけた魚などを食べた場合は安全ではないでしょう?
食べ物に対しては規制がかかっているので(悪いんだろう)とゆう浅い認識しかないですけれども…
あまり気にせずお寿司は食べてますがW子供に魚は少し躊躇しますね
返コメ
2012/03/08 16:02
16. >にゃんこ先生さん
コメントありがとうございます。
まさにその通りだと思います。
風評や誤解は無知から生じるもので、風評を信ずる人に悪意がないのが風評を拡大させてしまう原動力となります。
これを解決する方法は風評の誤解を解く以外ありません。
私なりに誤解による風評をどうしたら解消できるか、そんなことを考えながらこの拙い日記を書いてみたのです。
返コメ
2012/03/08 13:18
15.
こんにちは。風評や誤解って
悪意ではなく、無知や不安感から起きるんですよね。
人間、不安や恐怖はいちはやく解決したいですから
誰かが、正しい知識と安心感さえ与えてくれれば
争いは起きずに済むと思います(´・ω・`)
争いによって一番傷付くのは、結局は当事者ですからね。
たいへん意義のある日記だと思います
ありがとうございます
返コメ
2012/03/07 22:42
14. >はかせさん
コメントありがとうございます。
私はもともと理系畑で現在は半ば文系のようなことをしていますが、言おうとしたことが理解していただけたのならうれしいです。
返コメ
2012/03/07 22:40
13. >みぃさん
コメントありがとうございます。
同じ道民どころか同郷の方(私も北見地方の育ち)に共感いただけてとてもうれしいです。
風評による差別を解消するには間違った風評が発生するのを防ぐ必要があるだろう、
それには多くの人が少しでも理解を深めることが必要であろうと考えたしだいです。
返コメ