たかが犬っころのお話
私が高校の頃、自宅で犬を飼うことになった。
知り合いから譲り受けた雑種で北海道犬の血筋を濃く引いているらしい。
北海道犬とは別名をアイヌ犬と言い、柴犬と同じくらいの中型犬で性質も飼い主以外には敵意をむき出しにする番犬向きの犬だ。
翌年の春、生後6ヵ月になったこの犬と近くの川原に散歩に出かけた。
犬を放すと犬は川辺まで走って行き、そこで右へ左へと跳ね回っている。
私はその様子を遠目に眺めていた。
細かいいきさつは覚えていない。
なぜか4人連れの男たちが私に絡んできた。
私と同世代の悪ガキ、たぶん私をちょっとからかってやろうと思ったのだろう。
私がどう応対したのかも覚えていないが、1人が私の胸を押し、後ろから誰かが足を引っかけたらしく私はずっこけて手をついた。
彼らはそのそぶりを見て笑った。
心底から私を攻撃しようとは思っていないようだ。
1人が遠くを指差して言った。
「あれ、お前の犬か?」
見ると川辺から何かが矢のような速さで吹っ飛んでくる。
私には何が起こったのかわからなかった。
犬は全力疾走のままジャンプ、私を突いた男の腹に頭から体当たりした。
男は後ろに尻もちをつき、犬もその衝撃でふらついたのか着地すると頭をブルッと振るった。
子犬が私のピンチを察し決死の覚悟で助けに来たのだ。
体当たりされた男は顔面蒼白で座り込んだまま口も利けない、一発KOのようだ。
「何すんだ、こらぁ!」
別の1人が怒鳴りながら背後から蹴りを入れた。
速い!
彼が片方の足を振り上げるその一瞬に犬は動画の早回しのように動いていとも簡単に蹴りをかわし、宙を泳ぐその足に噛み付くとそのままさらに引っ張った。
彼が股裂き気味に尻もちをついたところで私は犬を押さえ手綱をかけた。
勝敗は誰の目にも明らかだった。
犬は悠々と歩き始め、残る2人はバネじかけの人形のように飛び退いて子犬に道を開けた。
これが生後6ヵ月、体重12キロの子犬の実力である。
最近、盲導犬に危害を加えるひどい事件がニュースなどで話題になっている。
もちろん許されることではない。
こういうバカ者どもには盲導犬に代わってこの当時の私の子犬に相手をさせてやりたいと思う。
盲導犬に使われる犬種はラブラドール・レトリバーなどの性質がおとなしい大型犬だ。
これらの犬種は性質が温和で命令に従順なため盲導犬や救助犬などに適している。
しかし、その本質は犬であり肉食獣である。
性質はおとなしくてもプロレスラーや関取でさえ倒せるほどの能力をもっているのだ。
犬は獲物を倒すとき相手の足に食いついてバランスを崩して倒す。
私の子犬がこれを行使したのは驚きだったが、これは生まれもった本能的習性である。
生物学的には犬は狼と同種の生き物であることがわかっているが、犬にはもう1つ集団生活に適した本能的習性がある。
それは家族や仲間を守るためには命さえ惜しまず、かつ著しく攻撃性が高まることだ。
盲導犬としての資質は後からしつけられたものに過ぎない。
もししつけで抑圧できないほど犬を怒らせてしまったらどうなるか、
あるいは飼い主にまで危害が加えられ犬の防衛本能が覚醒したらどうなるか、
無知なバカ者が続けばいつかより重大な悲劇が生じるだろう。
たかが犬っころではない。
悲劇を拡大しないために、犬は温厚であっても強い生き物であり安易にからかってはいけないことを多くの人が認識することが大切だ。
コメント
2014/08/28 16:51
2. >>1 みーちゃんさん
コメントありがとうございます。
犬は人間の友だち、友だちとして尊重することが大切ですよね。
返コメ
2014/08/28 16:31
1. 犬好きな私には素晴らしい日記を読ませていただきました(*^^*)ありがとう♪
返コメ