遠藤周作「私のイエス」より
60代後半  熊本県
2017/06/04 15:30
遠藤周作「私のイエス」より
 迷いや悩みを持ったりしても、そういう迷いとか悲しみとかを知ってくれる人がいるのだということ、そういう存在があるのだということです。そして、これが、私はキリスト教を信じてよかったな、という気持ちになる大きな拠所でもあるのです。

 それでは、自分の悩みや悲しみをわかってくれるはずの私の女房とイエスは、どこが違うのでしょう。たとえば、女房の場合、もし亭主が浮気をしたとすれば、当然、怒るでしょう。人間は、自分を裏切った人間に対しては怒るものです。

 ところが、イエスの場合はどうでしょう。裏切れば、やはり悲しまないはずはないでしょう。しかし、なぜ、裏切らなくてはならなかったかとか、なぜ、裏切るような弱い性格だったのかといった、裏切る人間の悲しみとか、その行為の背後にあるものすべてをわかってくれるという違いがあるのです。
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