おまえのブログはインチキばかりか
☆ ☆ ☆
M子さんという40代の専業主婦がいた。
夫と中学生の一人息子との3人暮らし。
仲むつまじい幸せな日々をおくっていた。
給料日には必ず花を買って帰る、仕事も家庭も大切にする優しい夫。
私立の進学校に通い、勉強とスポーツに秀でた自慢の息子。
料理が得意だったM子さんは、自慢の手料理の写真と共に、そんな家庭の幸せな毎日をブログに掲載していた。
彼女のブログはとても人気が高かった。
「優しい旦那さんがうらやましい」
「幸せな家族が目に浮かんできます」
毎日多くの「いいね」の評価が寄せられた。
☆ ☆ ☆
ところが、ある日一人のフォロワーが書きこんだコメントが、状況を一変させてしまう。
「M子さんの話って、これ本当のことなんですか?」
あまりに完璧過ぎる家族の内容に浮かんだ疑問だった。
別に問いただしたいというわけではなく、ささやかな疑問を書きこんだに過ぎなかった。
それ以来、M子さんの書くブログが様変わりしてしまう。
明らかに筆致が乱れ、内容にも矛盾が見られるようになった。
一度入った亀裂は、これまで構築してきた世界を粉々に砕いた。
「嘘つき」
「ペテン師」
「おまえのブログはインチキばかりか」
かつてのフォロワーからのそんな書きこみ。
そして彼女はブログの更新をやめてしまった。
☆ ☆ ☆
実はM子さんの書くものは「嘘」だったのだ。
彼女の夫は外に女をつくり家に帰ってこない。
たまに帰ってきても、妻に対して暴力をふるうことさえあった。
一人息子は登校拒否になり、夜遅くまで盛り場をうろつきだす。
警察に補導されることも何度かあった。
「優しい夫」も「自慢の息子」もそこには存在していなかった。
家庭は破たんしていた。
ブログに書かれた家族の姿はかつての幸せだった日々の話で、今となっては虚構であり、さらに言えばM子さんの切実な願望だったのかも知れない。
今は家族の誰も口にしない手料理を、彼女は毎日作り、写真をブログに掲載していた。
なぜM子さんはそんな「嘘」のブログを書き連ねていたのだろうか。
もしかしたら、崩れ落ちそうな心を支えるため、フィクションの世界に自分を投じて、かろうじて踏ん張っていたとも考えられる。
毎日綴られる虚構の世界。
そこだけが、彼女のたった一つのよりどころと呼べたのだろう。
もちろん彼女は多くのフォロワーを裏切った結果になったわけで、非難を受けるのも仕方がないのかも知れない。
しかしはたしてこれは「悪」なのだろうか?
もちろん初めから人を欺き傷つけようとしたり、何かの利益を得るためにつく嘘は許されない。
金を騙し取るとか、カルトへ勧誘するとか。
けれど、自分の逃げ場をつくるための嘘が、やがて手がつけられないほど膨れ上がり制御できなくなった時、それも同じ「悪」なのだろうか。
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「リアル」だ「バーチャル」だと、二分して考えがちな、現実とサイトとの関わりあい。
でも、100%の真実にも100%の嘘にも人は生きられない。
立ち位置は違っていても、常に人は、真実と虚構の間にさまよっている。
どれだけ自分を客観視しても、完全な自分なんて表現することは不可能だ。
虚栄や粉飾は拭いきれない。
逆にまったく自分と違うキャラクター演じたとしても、隠しきれない素の自分がどこかに表出してしまうものだ。
ここワクワクでも同じだろう。
アバターの後ろには生身の人間がいる。
いつも笑顔のアバターの後ろにいる者は、今日も耐え難い悲しみの涙を浮かべているかもしれない。
世間では「ダーク」だと言われることが多い出会い系サイト。
だけどその世界に救済を求めている人間がいる現実。
ここで自身の苦悩を吐き出し、わずかな安らぎを得て、また明日も生きていけると踏ん張っている者たち。
真実だとか嘘だとか、正しいだとか間違っているとか。
そういう物差しでは計れない、生身の人間の姿がここにはある。
そんなことに、ふと思いをはせてみた。
☆ ☆ ☆
この日記を読んでくれた人に、一つお願いがおますねん。
もしワクワクで、めっちゃ大阪弁が下手で、ギャグが滑りまくる日記主を見つけても
「おまえは本当に大阪人か?」
などと真相を探らんように。
彼には人に言われへん
『毛深いわき毛』
おっと違った・・・
「深いわけ」
があるかもしれまへんのでね(笑)
コメント
2017/11/16 6:20
1. ガロンさん
おはよございます
ブログの中だけは
M子さんが思い描く
【理想の家庭】
でいたかったのかもしれない
そういえば…
ガロンさん『ワキ毛』
三つ編みしてるとか
今度見せてくださいね
(●´ω`●)
返コメ