☆ ☆ ☆
うちの介護施設で一番の若手職員、ミズキちゃん。
高校を卒業したあと、フリーターを経てこの世界に入って来た。
仕事熱心で、とてもがんばり屋さん。
そんなミズキちゃんが、初めてのクリスマスイベントの主催に抜擢された。
大はりきりで、率先して飾りつけやらBGMの選曲やらではりきっていたのに。
でもなんだか浮かない顔・・・
「どうした? なんか悩み事でもあるんか?」
僕がそう尋ねると。
「すいません、ちょっと・・・」
言葉を濁す。
「介護っていうのはチームプレー。一人で抱えてたらあかんで。困ったことがあればメンバーみんなで共有して解決していくから」
「ありがとうございます。実は、徳次郎さんのことなんです」
徳次郎さんと言うのは施設の利用者さん。
90歳をこえた、なかなかの難しい人。
話を聞いてみると、徳さんはクリスマスパーティーの参加を断固として拒否しているらしい。
「クリスマスなんてアメリカの文化やないか。戦争でわしの家は焼夷弾で焼かれた。そんな国のまねごとなんかできるか。クリスマスなんて大っ嫌いや
![[exclamation]](https://img.550909.com/emoji/ic_biccuri.gif)
」
とかなりのご立腹。
「クリスマスと戦争とか関係ないのに・・・」
ミズキちゃんは悲しそうに顔を曇らせる。
「確かにその通り。でも戦争を体験した人は、いまだにその癒えない傷を引きずっている人もいるからね」
僕は説明した。
「どうしたらいいんでしょうか? どうしたら参加してもらえるんでしょうか」
「介護っていうのはね、利用者さんの望む暮らしのお手伝いをすること。相手がイヤなことを無理強いするんは、それは職員の自己満足になるから」
そうは諭してみたものの、毎日遅くまで頑張っているミズキちゃんの労にも報いてあげたいし。
☆ ☆ ☆
さてクリスマスの当日。
職員はクリスマスの仮装をする。
トナカイ姿のミズキちゃんはかわいくてええねんけど・・・
「なんで俺だけ節分の鬼の仮装やねん? クリスマスと関係あれへんやん」
「すいません、仮装が足らなくて。☆美さんに相談したら、『先輩は笑われるのを喜ぶから、鬼やらせとったらええよ』と言われたもので・・・」
頭を下げるミズキちゃん。
ナンデヤネン
☆美っていうんは、日記によく出てくる、生意気な後輩である。
あいつの方こそ鬼だ。
でも利用者さんからメッチャ笑いを取れたから、まあ良しとしよう(笑)
みんなでワイワイとゲームをしたり歌を歌ったりしていると、車いすで遠巻きにこちらをチラチラ見ている徳さんがいた。
「徳次郎さんもこちらで楽しみましょう」
ミズキちゃんが声をかける。
「アメリカの文化みたいなもん誰が参加するか」
あいかわらずな徳さん。
でもわざわざ覗きにきてくれるっていうのは、やっぱり気になるからなんよね。
とは言え意地を張った手前、「参加したい」とも言いづらいみたい。
人って誰も心のうちに寂しさを抱えていて、でもそれを素直に表現できず頑固になったりしてしまうことがあるやん。
これは高齢者とか若者とか、介護を受ける側とか介護士とか、そんなんいっさい関係なくね。
「ミズキちゃん、ちょっと小芝居やってくれへんか」
僕は彼女に耳打ちして、クリスマスツリーの赤や緑のランプの配線を緩める。
「あれ? 電気が点いたり消えたりします。どうなってるんでしょうか」
「ホンマや、故障かな」
ミズキちゃんと僕が打ち合わせた芝居をする。
うまくいくかどうか不安やけど。
「どうしたんや」
遠巻きにしていた徳さんが車いすを操作してやってきた。
「ああ、徳さんええとこに。ほらこれランプがおかしいねん」
僕はツリーを指さした。
「わしに見せてみいや」
徳さんは配線をチェックする。
徳さんは長年電気屋の仕事をしていたから、職人の魂が揺さぶられたんやろな。
「ああこれ、配線がゆるんどるだけやがな」
そう言いながら元に戻してくれた。
「徳次郎さん、ありがとうございます」
「さすが徳さん」
ミズキちゃんと僕がお礼を言うと、徳さんはちょいと照れた顔をした。
「徳さん、お礼にケーキなんかいかがです」
「ケーキか、わしは甘いもんはあんまり好きやないけどなあ」
と言いつつも、徳さんはまんざらでもなさそう。
「ミズキちゃん、徳さんにケーキをお持ちして」
「はーい、すぐお持ちしますね」
すると徳さん
「一番大きいやつ頼むで
![[グッド(上向き矢印)]](https://img.550909.com/emoji/ic_good.gif)
」
☆ ☆ ☆
その後またみんなでゲームや歌で楽しむ。
すっかり徳さんもなじんでいる。
そして記念写真。
「おい、わしにもあんな帽子ないんか?」
徳さんは、他の利用者さんがかぶっていたサンタ帽を指さした。
「あれっ? 徳さんサンタ帽かぶりたかったんや」
ツッコミを入れると
「なんにも無いと、このハゲ頭が寂しいからな」
笑いながらそう答える徳さん。
「徳さん、その帽子よう似合ってるよ。はいピース」
サンタ帽の徳さんと、トナカイの仮装のミズキちゃんの2ショット写真を撮った。
二人ともいい笑顔やね
「クリスマスもまんざら悪くないな、また来年も頼むで」
すっかりニコニコ顔の徳さんは、これまた笑顔のまぶしいミズキちゃんと握手していた。
ミズキちゃん企画のクリスマスイベントが成功して良かった。
一生懸命に作り上げたからこそ、利用者さんに喜んでもらえたんよね。
徳さんもひとりで寂しい思いをしなくて、良かった良かった。
☆ ☆ ☆
クリスマス。
それぞれの胸にいろいろな思いはあれど、みんなが笑顔で終わってホンマに嬉しい。
もしかしたら、サンタクロースっていうのは実在するのかもしれない。
ただサンタがくれるプレゼントは、お菓子でもおもちゃでもなく、きっと「笑顔」なんやろな。
そんなことに気づかせてくれた。
クリスマスに起きた小さなミラクル、とても嬉しかったお話
コメント
2018/01/15 14:57
37.
ガロンさん、まいどん(o^^o)
いい話ですねぇー(ジーン)
ミズキちゃんをみならってミズギ着ました
(おいっ)
返コメ
2018/01/15 11:28
36. >>35 ☆*:.。.香香.。.:*☆さん
お疲れ様(*'ω'*)
これね、また節分で鬼やらされそうなんで、すっかり鬼に浸っております(笑)
ほんま若い子からは学ぶことが多くて、おっさんのわても、まだまだ頑張らなあかんなと思う。
誰もが笑顔で過ごせる時間や空間て難しいかもやけど、少しでもそんな瞬間が実現できたら素敵やよね。
今回も大いに学びました(*^▽^*)
返コメ
2018/01/15 10:13
35. おはようございます(*^▽^*)
うーん☆ミズキさん真面目で
素敵なスタッフさんですね♪
ガロンさんだけが鬼って( ´∀`)
楽しい時間でしたでしょうね♪
頑固なおじいちゃんって必ず
居ますが戦争に行っているから
こそのこだわり…
なんだか分かる気がしますが
最終的に笑顔で参加して下さって
嬉しくなりますね☆
ガロンさんの言葉の魔法で楽しい
X'masパーティーに
なりましたね(´▽`*)
返コメ
2018/01/15 7:56
34. >>32 なっちー☆マダム安倍夏美ー〓夫人さん
なぜ選んだのか、一言で言えば「やってみたいと思ったから」ですね。
教科書が役に立つかについては、確かに仕事は現場で覚えるものです。
ただ、勉強して資格を取らないと、何も始まらないです。
知識と実務、その両方が必要となります。
返コメ
2018/01/15 3:40
33. 夜中に、コメントさせて貰って
非常識な時間に大変申し訳ございませんでした。
おやすみなさいませ、
返コメ
2018/01/15 3:13
32. 夜分に…あなたは何故に介護職選んだ?
介護の職場の、職員って!どーなん!
あたしは、休職者ハローワークからの
紹介で介護福祉士実務者の学校へ
行ったけど、教科書なんて現場では約には
たたない。とか
悪口は平気で言うたり、休憩時間に
八方美人?世あたり上手な人達のいやらしいさに
うんざり、
返コメ
2018/01/14 19:39
31. >>30 なつ(*´∀`)♪さん
こんばんは(*^^*)
いえいえ俺の語りはともかくとして、みんなが笑顔になれた結果がとても嬉しかったんよ。
もちろん仕事やから、うまくいかないこともあるし、まったく違った結果で意気消沈することもある。
今回は、パズルのピースがはまるように解決できたことが何より良かったなあ。
返コメ
2018/01/14 19:06
30. こんばんは
素敵な話で涙がポロリ( ;∀;)
ガロンさんの話し方もうまいんですよね
返コメ
2018/01/14 17:14
29. >>24 スキッチさん
まさにその通りなんよ(*'ω'*)
はりきって準備していた後輩のためにも、ぜひとも成功させたくて。
最後はみんなが笑顔で終えられたから、とても良かったなあ。
プライベートでは何もないクリスマスでしたけどね(;^ω^)
返コメ
2018/01/14 17:11
28. >>23 ミワ/新春早々ポロポロ(;^o^)さん
サンタの由来を調べると、貧しい子供にプレゼントを贈って笑顔にしてあげた。
みたいな清らかな始まりだったそうやね。
日本では恋人通しがあんなことこんなことする日で、実に羨ましい、いえ、嘆かわしい(笑)
きっと今年はサンタに出逢えること応援しているよ。
^^) _旦
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