真実と幻想、はざまで人は生きている
★ ☆ ★ ☆
介護施設の、ある70代の利用者さん
仮に「信子さん」と呼んでおこう
部屋を訪れると、信子さんはいつも笑顔で出迎えてくれる
「これ見てください、いいでしょう」
信子さんは、誰に対してもいつもおだやかな人だ
「このマフラー、先週に息子が買ってきてくれたんですよ、わたしの誕生日プレゼントに」
首に巻いたその『マフラー』に頬ずりしながら、ニッコリとほほ笑む
「本当に優しい息子なの」
でも、信子さんの息子さんは、何年も前に亡くなっている
そして首に巻かれたマフラーは、施設で使用しているタオルだ
★ ☆ ★ ☆
事故で息子を失ったショックを受け入れられず、信子さんはその後、虚構の世界で生きることになった
いや、虚構と呼ぶのは失礼だろう
信子さんの中では、今も息子さんは元気な昔の姿のままだから
こんな時、介護士やケアマネはどのように対応したらいいのだろうか?
「あなたの息子さんは既に亡くなっているのですよ、これはマフラーではなくタオル、現実を見てください」
なんて否定にかかる職員がいたら、冷淡だと言わざるを得ない
じゃあぎゃくに
「いい息子さんですね、素敵なマフラーですよ」
なんて話を合わせたらいいのか
これもまた正解ではない
その結果、妄想が酷くなってしまうことさえある
こんな時職員は
「受容」
ということを教えられる
「受容」、受け容れる(うけいれる)こと
相手の言葉を、肯定も否定もせず、あるがままにうけいれることが大切だと教わる
たとえ信じられなくても、その人の存在を丸ごと認めてあげる
これを「受容」という
★ ☆ ★ ☆
この「受容」という概念は、介護福祉士試験やケアマネの試験には必ず出題される
臨床心理学の世界でも出てくる
言葉を暗記するのは難しくないが、それを実践することはかなりの困難だ
あるがままにうけいれる、と言っても、つい我々は価値判断をしてしまう
「その考えは間違っている」
「そんなことはありえない」
なんて否定してしまう
思い返してみれば、昔学校で習った教科というのは、正解がある世界だった(それも一つだけ)
それをたくさん暗記しておけば、良い成績が取れた
ところが社会に出てみると、正解の導き出せない問題なんて世の中にはゴロゴロあふれかえっている
むしろ、簡単に一つの答えが出せるような問題の方が少ない
ある人の「正解」は別な人の「不正解」もあれば
ある人の「不正解」は別な人の「正解」もある
信子さんの世界は、第三者から見れば『虚構』かもしれないけれど、彼女にとっては守り抜きたい「真実」
★ ☆ ★ ☆
そもそも誰も100%の真実にも、100%の虚構にも生きられないと思う
それぞれ立ち位置は違っても、その間のどこかで生きているはずだ
日常生活では、職場や家庭、町内の人とのやりとり、友人同士の交流
それぞれでいろいろな顔がある
そのどれもが自分であって、どれが本当でどれが嘘かなんて決められるものでもない
ではこのワクワクはどうだろう?
アバターはどう見ても、その人の本当の姿ではないだろう
実物はアバターみたいにかわいくはないだろうし、皺もあれば髪も白かったり少なかったりする
「いや自分はアバターと瓜二つだ」
という人がいたら、謝っておくが(笑)
じゃあこのワクワクは完全なバーチャルか? と言えば、そうじゃない
にこやかに笑っているアバターの後ろには、泣いたり怒ったり、傷ついたりする生身の人間がいる
それは忘れてはいけないと思う
そこをおさえておかないと、簡単に誰かを中傷してしまう
「人を切り裂くだけの冷たい真実なら、むしろ、あたたかい嘘につつまれたい」
信子さんがそう教えてくれた気がする
コメント
2020/01/22 22:07
13. >>10 管理人音無響子、気まぐれにスマイル押しさん
おつかれさま
そやね、感受性の豊かな人だから、自分の世界を築きあげれるのかもしれないな
(^^)
あ、俺も亡き両親が夢に出てくる時がある
ものすごくクリアな明晰夢で、現実か夢か区別できないことが・・・
でもよく考えてみたら、区別する必要もないのかもね
人の思念って、俺も残るんやと思うんよ
なぜ不寛容が増えてきたのか? これも考えてみたいテーマだな
返コメ
2020/01/22 21:56
12. >>9 アギーさん
アバターにどこが似ているか、4000字の詳細レポートで頼む(笑)
受容に関しては、この業界にいたら腐るほど耳にしてきた
でも、頭で分かっているのとそれが実践できるかの隔たりが、とても大きいんよね
自分で「できた」と感じたことが、自己満足でしかないこともある
「となる」その概念は初耳だったので、勉強してみたいな
「となりのトトロ」みたいな存在になれたら、それもいいかも
返コメ
2020/01/22 21:54
11. こんばんは〓。
、その信子さんが穏やかに過ごせますように〓。
受容より受け入れるの方がいい響きですね
返コメ
2020/01/22 21:12
10. こんばんわ。
その信子さんという利用者のかた、なんか心が豊かだな~と感じます。
実は、わたくすも3年前(足掛け4年)に他界したしょーもない爺(父のこと)がたまに夢に出てきたりして、相変わらず足を引っ張るから現実と夢とがソウサクすることがあります。いえね、肉体は確かに消えたけど思念が残っているんじゃないかと思われるフシがあってw
最近の日本人は寛容力が減り、子供や高齢者をはじめとする社会的弱者に対する不寛容が酷くなってますよね。ま、ふつうに生活することそのものが難しい行き辛いですね。
返コメ
2020/01/22 20:26
9. 誰がなんと言おうと、俺はアバターは似てる!…ハズ。
受容の概念の展開のひとつに「隣る」(となる)というのが提案されている。
ただ、近くにいてありのままを受け止める存在。
養育や介護はまずは大いなる受容からだと、感じる。
まぁ、現場の頃はそうもいかなかったのは反省…。
返コメ
2020/01/22 17:50
8. >>7 ミワ/フォロワー受け付けてませんm(__)mさん
へへへ、たまには勉強になること書くやろ(笑)
いつもは、まったく役立たないギャグばかりやけど・・・
うん、薬も個人によっては副作用がきつく出たり、
まったく効かなかったりもするね
マニュアル的に対応できないことって、たくさんある
知らないことを否定するんは簡単やけど、それでは世の中ギクシャクしてしまう
ぜひ息子さんのこれからも、あたたかく見守ってあげてや
返コメ
2020/01/22 15:45
7.
めちゃくちゃ勉強になりましたm(__)m
薬も同じ事が言えて、人によっては
毒にもなるって聞いています(;^o^)
人が相手だから、十人十色だとは
思いますが、介護士って大変ですね!
私が、介護士じゃなくて良かった
と、ガロンさんの日記を読むたび
思ってしまいます(@ ̄□ ̄@;)!!
返コメ
2020/01/22 11:17
6. >>5 スキッチさん
「感謝の気持ちは無くなる事は無くて」
これは良い言葉やね
形としてその人は見えなくなっても、心のつながりは消えない
その通りだよね
ぎゃくに言えば、金をかけていくら立派な墓をたてても、
個人への感謝がなければ、何もならない
人の想いは、尊重しないとね
返コメ
2020/01/22 10:33
5. 昔墓は何の為に有るの?、そんな疑問を持ちました、亡くなった人の為?、私が辿り着いた答えは、お世話に成った人が亡くなってしまっても、故人に対する感謝の気持ちは無くなる事は無くて、お墓の前に立ち言葉が届かなくても、声を掛け対話する気持ちと同じだと思います、居もしない神に語り掛けるのを否定しない事と同じく、人の想いもまた否定しては成らないと思いますね。
返コメ
2020/01/22 8:43
4. >>3
もも
さん
ありがとう(⌒‐⌒)
母の愛、それがしみじみと感じられたんよ
肉体を失っても、思い出の中では行き続けていられる
それは誰にも壊せないし、壊したらいけない世界やと思うねん
想像力、まさにそれが大切やね
相手を思いやれる気持ち、それがないと世の中殺伐としてしまう
アバターは笑っていても、その向こうで泣いているかもしれない
少しのイマジネーションが、さらに世界を広げてくれるはず
(^-^)
返コメ