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10年前の、3月11日
未曾有の大災害が起きる


東日本大震災


俺はワクワクメールに入会して8か月ほどが過ぎていた
当時を振り返り、ここワクワクの状況を書いてみたい




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その時、このワクワクでやたらと叫ばれていた言葉がある

『不謹慎』

『自粛』



・こんな時に出会いを求めているやつは不謹慎だ

・そういうオマエもワクワクをやっているのは同じ、不謹慎だろ

・自粛しろ自粛

・粛清ムードの方がおかしいんじゃないか

等々


怒号のようにこれらの言葉が、日記や伝言板で飛び交う
バトルや中傷があちこちで起きていた

あきらかなデマや、でどころの不確かな情報を拡散している連中もいた




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でもね、ワクワクはそんな争いばかりじゃなかった


まもなく、ワクワクの運営が呼びかけ、ポイントを寄付して義援金を送る大規模なプロジェクトが開始される
【絆プロジェクト】
そんな名前の活動だったかな？

何万人もの会員が趣旨に賛同し、寄せられた金額と同じ額を、さらにワクワクの運営が上乗せした
こうして集まった義援金は何千万円かになったはず
日本赤十字社を通じ被災地へとおくられた

募金した人にはアバター用のリボンが配られ、それを掲げている会員も多くいた
俺も色違いでリボンを全種類集めた覚えがある




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メッセージのコーナーもでき、出会い系にいる者たちから、同じく出会い系にいる仲間へと多くのエールが届けられた

同じ時代、この出会い系サイトで関わりあった関係
サイトを通しての繋がり

会ったことが無くても、顏を知らなくても
一人一人ができる範囲で、できることをする

ささやかな力でも、それが結集すると大きなうねりとなる
そのことに気づかされた


「ワクワクやるやないか！」
俺は胸が熱くなった


こういった活動を『偽善だ』と叩く連中もいた

その一方
「何もしない善より、何かをする偽善の方がずっといい」
「偽善？　上等じゃねーか、それでも自分は募金する」
という声があがり始めた


いつしか不謹慎、自粛、偽善と言うワードに代わって

「絆」

「繋がり」

そんな言葉がワクワクで交わされるようになる




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その時俺が感じたのは

「明日何が起きるのか誰にも分からない、だったら今を大切にしていこう」
ってことだった


震災以前から「いつかオフ会をしよう」と約束していた福島のワク友がいた
先延ばしになったままだ

このまま震災の影響で、永遠に足が遠のくのだけはイヤだった
「約束を果たしたい」

しばらくしてから俺は福島を訪れた


待ち合わせ場所は、駅のそばのヨドバシカメラの前
彼女は、少しはにかんだ笑顔で出迎えてくれた

「来て良かった」
俺も笑顔になれた


その彼女と会ったのはその時の一回だったけど、会えて良かったよ
彼女はその後、恋人ができて寿退会したけど




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ワクワクメール

世間では出会い系サイトは、「ダークだアングラだ」と疎んじられる場所なのかもしれない
でもここは、紛れもなく人と人との出会いがあり、交流が生まれる世界でもある


10年前、俺はワクワクにいた
10年後の今も、俺はワクワクにいる


ひとつ確実に言えることは
「俺は、このワクワクが好きなんや」
ってことかな


ワクワクを通じて見たきた景色は、10年前も現在も、どこかでずっと繋がっている