90歳のオジサン、若い愛人をつくってしまう
認知症と聞くと、忘れられない思い出が浮かんでくる
以前も取り上げたけど、良かったら読んでみてください
★ ☆ ★ ☆
大正生まれの叔父と叔母は、子供がいなかったこともあり、僕のことを自分の子供のようにかわいがってくれた
叔父というのは、酒と女性が大好きな豪放な男だった
反して叔母は、生真面目で気丈な女性だった
90歳の時に叔父は、若いお姉ちゃんと仲良くなってしまった
元気というか懲りないというか(笑)
叔母は怒り心頭で、
「うちの亭主に二度と近づかんといてや」
そのお姉ちゃんのところに怒鳴りこみにいく
ところが、そのお姉ちゃんが小さな子供を抱えたシングルマザーだと知ると、情にほだされてしまう
50万円ばかりを、手切れ金として置いて帰ってきた
★ ☆ ★ ☆
それくらい勝気で情に厚い叔母が、癌をわずらう
「気持ちの強い人だから大丈夫だろう」
とのことで、それを告知したのだがショックが大き過ぎたのだろう
叔母の性格が一変してしまう
あれほど気丈だったのに弱々しくなり、認知症も発症した
日に日に、会話も表情も失われていくことになる
これがあの叔母か、と僕は信じられないくらいだった
★ ☆ ★ ☆
久しぶりに僕が病院に見舞いに行くと、叔母はティッシュで、よだれだらけの口を拭いてもらっていた
僕の顔を見ると
「あーあー」
と、言葉にならない声を出し、その汚れたティッシュを差し出した
最初、なんのことか理解できなかった
しばらくして、ようやくわかった
叔母は僕によく、こっそりと小遣いをくれたものだ
「お母ちゃんにはナイショやで、はよ持っていき」
そう言いながら
その時とまったく同じ姿だった
叔母にはそのティッシュが、お札に見えたのだろう
僕に小遣いを渡そうと、それを差し出していたのだ
病床の身でありながらも僕を思いやってくれる
その気持ちがありがたくて、涙が出そうになって、僕は「ありがとう」と、そのティッシュを財布にしまった
★ ☆ ★ ☆
自分では食事をとることができなくなった叔母の介助に、叔父は毎日病院へ通った
雨の日も台風が近づいていても、自転車をこぎながら
叔母の食事介助
「これだけはワシの仕事や」
他の誰にもさせなかった
「今までさんざん苦労をかけてきた、罪ほろぼしをせなワシは死にきれん」
表情が乏しくなっていた叔母も、叔父の手で食べさせてもらっているとき、実に良い顔をしていたものだ
叔父の食事介助は、最後まで続けられた
一年半後、叔母は旅立った
叔父は号泣した
それは初めてみる叔父の涙だった
★ ☆ ★ ☆
それから何年かして、僕もいろいろあって介護の世界に入ることになった
数多くの認知症の人と接してきた
そんな中、これだけは大切にしていることがある
それは「認知症の〇〇さん」という見方をしない、ってことだ
認知症が先にきて、そのあとに人がくるわけじゃない
逆なんだ
〇〇さんという人がいて、その人の中に認知症という一面がある
そうとらえる
順序を逆にすると、見える世界も変わってくるからね
★ ☆ ★ ☆
認知症というのは、いつか、誰にもかかわってくる問題だ
自分であったり家族であったり
認知症は多くのことを奪っていく
老老介護という社会的な問題も根深い
そんな中、認知症が最後まで奪い去ることのできない「何か」もあると思う
人の本質的なぬくもり、と言うべきものが
僕はそう信じている
それを教えてくれたのが、今は亡き叔父と叔母だった
ありがとう
コメント
2021/08/01 22:24
39. >>38 キララさん
お褒めの言葉、ありがとうございます(*^^*)
若いころは公募雑誌を買って、あちこち投稿し続けていた時期がありましたね
その時の文章修業が、多少は役に立っているのかもしれないです
癌の告知は繊細な問題も含んでいますね
元気な時は「告知賛成派」であっても、いざその立場になると受け止められないこともある
人の心は強靭さと共に、危うい脆さも秘めていると思うんですよ
大きなショックが人の性格を一変してしまうこともある
正解の導けない命題かもしれません
できるのは、選んだ答えに向き合うことだけ
返コメ
2021/08/01 21:28
38. 作家になれるのでは?凄い文章力![[るんるん]](https://img.550909.com/emoji/ic_note.gif)
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加えて沢山の方々に丁寧な返コメ
お人柄が忍ばれます
しかし叔父様、元気よ過ぎ^^;
泣かされた叔母様は情の深い方!
「蜘蛛の糸」善意を神様は見てて~
叔父様の深い愛情に包まれ旅立ったのが証だと…
癌の告知、難しい!
最後まで明るく健気に戦った小林麻央さん思い出す…自分ならどうだろう?
叔母様は口を拭ったティシュがお札に見えた?それを応えて涙ながらに有難うと受け取った、愛情溢れてる場面に感動
そういう体験が今、そして今後にも役立っていくんですね~〓
返コメ
2021/08/01 20:53
37. >>36 smileさん
そう言ってもらえると、嬉しいよ
(*^^*)
と言っても、叔父と叔母のおかげなんやけど(笑)
最近あんまし介護関連の日記は書かなくなったけど
この日記が、何かのヒントになったら、より嬉しく思う
返コメ
2021/08/01 20:36
36. 凄く心うたれる内容の日記〓️
ありがとう
返コメ
2021/08/01 17:24
35. >>34 マスカットさん
そう言ってもらえると、亡き叔父と叔母も喜ぶと思います
この日記を書いた俺も同じく
何がしか伝わるメッセージがあったのなら、本当に嬉しいな
(^-^)
返コメ
2021/08/01 14:21
34. >>30 力″ 口 ンさん
ガロンさん
重ねて
ありがとうございます。
今回の叔父さんと叔母さんの
ご夫婦二人のお話しはきっと
暫く私の中に残ると思います。
返コメ
2021/08/01 14:15
33. >>31 なつさん
おっしゃる通りで、認知症は様々な症状があります
だから、すべてを肯定はできないし、その渦中にあって本人はもちろん、家族がつらい思いをしていることも多々あるんですよね
愛情を感じることさえ難しくなったとしても、その気持ちを誰も否定することはできません
悪いのは本人でも家族でもなく、認知症そのものなのだから
医学が進歩して、この病気が治る日がくるなら、多くの人が救われるのに
そう願わずにはいられないです
返コメ
2021/08/01 14:05
32. >>29 黒の獅子王さん
うん、実はそれは大いに関係ありやな
(^-^)
その時は、まさか自分がその世界に行くとは考えてみなかったけど
あとになって
「ああ繋がっているわ」
って実感するから
導かれた、っていうと大げさやけど、後押しされたのかもしれないな
世の中には、目に見えない力が働くことってあるんやと思う
返コメ
2021/08/01 14:04
31. 身につまされました。私の父も認知症でした。色んなタイプの認知症がありますよね。うちの父は激昂型だったから、日々暴力振るわれ、辛かった(>_<)また徘徊にも苦しめられました…。「病気が悪いんやから、本人が一番可哀想なんやからね」との医師の言葉に涙ながらに頷いたことが思い出されます。叔父さんの愛情に涙しました。夫婦って凄いですね。私の場合は親子関係でしたが、正直、愛情を感じることさえ難しくなりましたから。認知症の方々の介護をされているガロンさんのことも心から尊敬します。
返コメ
2021/08/01 14:03
30. >>28 マスカットさん
いえいえ
自分の体験は、活きた知恵
それを語って活用することは意味のあること
恥ずかしがることはまったく無く、大いに活かせてください
経験に勝る財産はないからね
金は使えば減るけど、経験したことは無くならない
(*^^*)
返コメ