クリスマスに起きた、ささやかな奇跡の物語
この日記は過去に書いた日記になります
クリスマスと言うことで、再びアップしてみました
介護施設で起きた、日常のささやかな奇跡のお話です
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何年か前のクリスマスの話
介護施設で一番の若手職員、ミズキちゃん
とてもがんばり屋さんな女の子だ
そんなミズキちゃんが、初めてのクリスマス会の主催に選ばれた
大はりきりで、飾りつけやらBGMの選曲に奮闘していた・・・
はずなのに、なんだか浮かない顔
「何か悩んでるんか? 一人で抱えてたらあかんで、悩みはメンバーみんなで共有するから」
と尋ねると
「ありがとうございます、実は、徳次郎さんのことなんです・・・」
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徳次郎さんと言うのは施設の利用者さん
90歳をこえた、なかなかの気難し屋さん
徳さんはパーティーの参加を強く拒否しているらしい
「クリスマスなんてアメリカの文化やないか、戦争でわしの家は焼夷弾で焼かれた、そんなもん大っ嫌いや」
とご立腹
「クリスマスと戦争と関係ないのに・・・」
ミズキちゃんの寂しそうな顔
「確かにそやな、でもね戦争を体験した人は、癒えない傷を引きずっている人も多いんよ」
僕は説明する
「どうしたらいいんでしょうか?」
「利用者さんのイヤなことを無理強いするんは、それは職員の自己満足になるから」
そうは言ったものの、毎日遅くまで頑張っているミズキちゃんの力になってあげたい
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クリスマス会の当日
職員は仮装する
トナカイ姿のミズキちゃんはかわいいんやけど・・・
「なんで俺だけ節分の鬼やねん? クリスマスと関係あれへんがな」
「すいません、衣装が足らなくて・・・」
「ナンデヤネン」
でも利用者さんにウケたんで、良しとするか(笑)
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みんなでワイワイ、ゲームや歌を楽しむ
向こうからこちらをチラチラ見ている徳さん
「徳次郎さんもこちらで楽しみましょう」
ミズキちゃんが声をかける
「日本は戦争でアメリカに負けたんや!」
あいかわらずな徳さん
でもね、徳さんもやっぱり寂しいんよね
人って誰もが気持ちを素直に表現できず、頑固になることってあるやん
高齢者とか若者とか、そんなん関係なく
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「ミズキちゃん、ちょっと」
僕は彼女に耳打ちして、クリスマスツリーの赤や緑のランプの配線を緩めた
「あれ? 電気が点いたり消えたりしますね」
「ホンマや、故障かな」
ミズキちゃんと僕が、打ち合わせた芝居をする
「どうしたんや」
遠巻きにしていた徳さんが、車いすを操作してやってきた
「ああ、徳さんええとこに、これランプがおかしいねん」
僕はツリーを指さす
「わしに見せてみいや」
徳さんは配線をチェックする
長年電気工事の仕事をしていたから、職人魂が揺さぶられたみたい
「なんやこれ、配線がゆるんどるだけや」
そう言いながら直してくれた
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「徳次郎さん、ありがとうございます」
「さすが徳さん」
ミズキちゃんと僕がお礼を言うと、徳さんはちょいと照れた顔
「徳さん、お礼にケーキなんかいかがです」
「ケーキか、わしは甘いもんは好きやないけどなあ」
と言いつつも、まんざらでもなさそう
「ミズキちゃん、徳さんにケーキをお持ちして」
「はーい、すぐお持ちしますね」
すると徳さん
「一番大きいやつ頼むで」
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その後またみんなでパーティーを楽しむ
すっかり徳さんもなじんでいる
「わしにもあんな帽子ないんか?」
徳さんは、他の利用者さんがかぶっていたサンタ帽を指さした
「あれっ? 徳さんクリスマス嫌いやったんやないの」
ツッコミを入れると
「なんも無いと、このハゲ頭が寂しいからな」
照れくさそうに頭をなでる徳さん
「徳さん、よう似合うとるよ、はいピース」
サンタ帽の徳さんと、トナカイ姿のミズキちゃんの2ショット写真を撮った
二人ともグッドスマイルや
「また来年も頼むで」
すっかりニコニコ顔の徳さんは、これまた笑顔のまぶしいミズキちゃんと握手をしていた
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ミズキちゃん主宰のクリスマスイベントは大成功に終わった
一生懸命に作り上げたからこそ、利用者さんに喜んでもらえたんよね
徳さんにも喜んでもらえて、さらに良し
利用者さんと職員、みんなの笑顔がそこにはあった
クリスマスに起きた、ささやかな奇跡の瞬間
介護施設にもサンタはやってきた
「笑顔」というプレゼントをたずさえて
※これを読んでくれた皆さんにも、ささやかな奇跡が訪れますように
(今回コメント欄は閉じさせていただきます)