ゆめさん(仮名)という女性がおられる。
年齢は90代。
もの静かでとてもがんばり屋さんだ。
ゆめさんはひたすら、国語辞書に乗っている言葉をノートに書き写す事を日課にしている。
リューマチを患っているのでうまくペンを握れない。
だから髪どめのゴムで指にペンをくくりつけて書いている。
震えてはいるが、一字一句ノートにしっかりと刻まれている。
「辞書を一冊書き写す事がわたしの人生の目的なのよ」
ゆめさんは力強く宣言する。
小さな頃から勉強が好きだったゆめさんだが、尋常小学校を出ると働きにだされた。
家庭が貧しくて、下の弟や妹の面倒を見なくてはならなかったからだ。
上の学校に行く夢は叶えられるはずがなかった。
激動の時代があった。
苦しくつらい経験もたくさんあった。
ゆめさんが米寿の誕生日に、孫さんから一冊の国語辞書をプレゼントされた。
「おばあちゃん、これからしっかり勉強してや」
そう言われたらしい。
ゆめさんが人生で初めて所有した自分だけの辞書。
「世の中にはこんなにたくさんの言葉があるのね
![[exclamation]](https://img.550909.com/emoji/ic_biccuri.gif)
」
感動したゆめさんは、すべての言葉を自分のものにしたくなった。
そして毎日少しずつノートに言葉を刻み込んでいく。
熱い思いをのせて。
「死ぬまでに全部書き写せるかしらね」
ゆめさんは介護士の俺にそう尋ねる。
「大丈夫、ゆめさんは200歳まで生きるから絶対に叶えられます」
そう答える。
「人をおばけ扱いして」
と笑いながらゆめさんは俺を軽くたたく。
『辞書を一冊書き写すなんて不可能だよ』
『辞書を書き写して何の意味がある』
陰でそんな風に小ばかにする者もいるようだ。
それって寂しい考え方だなと俺は思うねん。
「価値」とか「意味」というものは、自分が見つけて築いていくものだ。
他人がとやかく口をはさむ事ではない。
ゆめさんは辞書を書き写す事で、日々の人生を燃焼させている。
頭が下がる思いだ。
50歳を過ぎて介護士の傍ら大学で心理学を学んでいる俺も、ゆめさんから毎日たくさんの事を学ばさせてもらっている。
俺の勉強のライバルは、ゆめさんなのだ。
「ゆめさんが辞書を書き写しあげるのと、自分が一人前の心理士になるの、どちらが先か競争やで」
「ええその勝負、受けてたちますよ」
ゆめさんはにこやかに微笑む。
俺も、ゆめさんに負けないように、これからも勉強を続けていきたいな。
コメント
2016/05/20 6:58
6. 私もゆめさんを応援したくなりました![[ほっとした顔]](https://img.550909.com/emoji/ic_face_relief.gif)
![[ほっとした顔]](https://img.550909.com/emoji/ic_face_relief.gif)
光明さした思いがしました
返コメ
2016/05/20 6:56
5. おはようございます
素敵な話しだと思った……
その信念みたいな意志の強さに
(^^)
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2016/05/20 6:35
4. >>3 ゆういちろうさん
ありがとう。
ゴールに到着するのは大切。
それより大切なのは、そこへ向かって歩んでいく志しかなと思うんです。
マニアックを貫き小説を書きつづけていく姿勢も素晴らしいでっせ
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2016/05/20 6:29
3. おはようございます。
何かを貫徹しようとする姿勢は本当に素晴らしい事だと思います。
良いお話をありがとうございました。
そして、ガロンさんもお仕事と学業を両立されてて尊敬します!
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2016/05/20 6:28
2. >>1 Dr.キリコ†国家錬金術師†さん![[ウッシッシ]](https://img.550909.com/emoji/ic_face_foppish.gif)
がはは。
痛いギャグ以外にも、さぶいギャグもあるで
人は生涯学んでいく生き物。
日々少しずつでも成長していけたらええよね
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2016/05/20 6:22
1. 世の中、勉強する事に意味はないなんて事はないと思います。
ガロンさんって痛いギャグだけじゃないんだ←ちと余計な事(笑)
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