3本足の仔犬
70代以上  大阪府
2017/06/08 5:15
3本足の仔犬
 
これは、僕が小学生の頃のできごと。



☆ ☆ ☆

町内に、やせ細った柴犬が棄てられていた。

まだ仔犬だった。



もともと飼い犬だったようだけれど、飼い主が引っ越し先では飼えないということで、無慈悲に棄てられたらしい。

狂ったように飼い主を捜してさまよっているうちに事故にあったらしく、右の後足が半分腐ってちぎれかけていた。



不憫に感じた町の人たちが保護しようとしても、かわいそうにすっかり人間不信になった仔犬は、人を見ると怯え、足をひきづりながら逃げてしまう。



町内に、ケンさんという60代のひとり者の男性がいた。

もともとは腕のいい大工だったけれど、現場で木材が崩れる事故に巻き込まれ、利き腕が不自由になってしまった。

それ以来荒れた生活をするようになり、廃品を売ってわずかばかりの金を稼いでは酒ばかりを飲んでいた。

そればかりか、酒を飲んではケンカをし、すっかり町内の鼻つまみ者に成り下がっていた。





☆ ☆ ☆

ある日ケンさんが気まぐれに、酒のつまみにしていたソーセージを3本足の仔犬に差し出した。

最初は怯えていた仔犬は、ゆっくりケンさんに近づいてきてクンクンとにおいをかぎ、ソーセージをがつがつ食べ始めた。

よっぽどお腹が空いていたのだろう。




誰にもなつかなくなった仔犬は、ケンさんだけには心を開いたのだ。


「俺もこいつも3本足で棄てられた身やから、気が合うんやろなあ」
ケンさんは寂しそうにそう言った。



仔犬は「マメ」と名づけられ、ケンさんに飼われることになる。


町の人たちがお金をカンパして、獣医にみせることになった。

衰弱はひどかったが、命は持ち直した。

ただ、腐りかけていた足は救えず切断された。





☆ ☆ ☆

マメと暮らすようになってケンさんは酒を一切飲まなくなった。

現場での軽作業の仕事も始めた。



「こいつの医者代を稼がなあかんからな」
ケンさんはニコニコしながらマメの頭をなでていた。

マメも嬉しそうに、ケンさんをペロペロなめていた。



失った足に、ケンさんは木材とゴムを使った義足を作ってはめてやった。

腕利きの大工だったケンさんだけど、利き腕が不自由になったからかなり苦労したようだ。

義足をつけたマメと散歩するケンさんは、晴れ晴れとした顔をしていた。





☆ ☆ ☆

でもその幸せは半年ほどで終わってしまった。

病気がちなマメが旅立っていったのだ。

マメを失ったケンさんは、その亡骸を抱え道の真ん中で大声をあげて泣いていた。



あまりに気の毒な姿に、周りの人も声をかけられなかったほどだ。



まもなくして、身寄りがいなくて長年の不摂生がたたって働けなくなったケンさんも、医療施設に入所することになる。

わずかばかりの荷物だけを持って。

その中には、マメに作ってやった義足も形見として入っていた。



町内の人たちにあいさつまわりをしながらケンさんは
「マメと暮らせた半年は、ほんまに幸せでした」
そう語っていた。



「マメも、ケンさんと暮らせて幸せやったはずやで」
町の人もそう声をかけていた。



うん、きっとそうだ。
短い命だったけど、マメもケンさんに愛されて喜んでいたに違いない。





☆ ☆ ☆

昔も今も、人間の身勝手さで棄てられる動物は後を絶たない。

命ある存在を、軽い気持ちで飼って軽い気持ちで棄てるその行為。

そういう者たちは、もし自分が棄てられて路頭に迷ってしまうことを想像したことがあるのだろうか。

人間だって動物だって、その悲しさやつらさは何も変わることはないはずだ。





☆ ☆ ☆

天国では、また足がはえそろったマメと、手が使えるようになったケンさんが、きっと仲良く暮らしていることやろね。
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コメント

70代以上  大阪府

2017/06/08 9:01

20.  >>19 まどかさん
おはよう。

生き物を飼うって行為は、その一生に対して責任を持つことだもんね。
世の中にはそれを理解せず、一時的な感情だけで飼う者がいること、それが悲しい。

ワンちゃんとこれからも笑顔で(^_^)

60代半ば  広島県

2017/06/08 8:56

19. おはようございます 朝から 感動して 泣いてしまいました… 私も いろいろと ありますが 今 いる2匹と 最後まで 一緒に 頑張って 暮らします(^-^)

70代以上  大阪府

2017/06/08 8:42

18.  >>17 謎の ファイアーストッパーマンさん
おはようさんです。

こちらこそ日記を読んでコメントをいただき、嬉しく思います。
ありがとうございます。

自分も昔を思い返しながら、胸がいっぱいになりました。
(^_^)

50代後半  大分県

2017/06/08 8:36

17. おはようございます 朝から泣ける話 ありがとうございます 

70代以上  大阪府

2017/06/08 8:21

16.  >>15 寅次郎さん
おはよう。

「棄てる神あれば拾う神あり」
そのことわざが浮かんできたよ。

人間不信だった仔犬が、再びまた人の優しさを知った。
それが救いとなったんやと思いますね。
(^-^)

50代前半  兵庫県

2017/06/08 8:15

15. おはようございます〓。

人というのは身勝手ですが、ケンさんとマメは出会う事によってお互いに必要として、いい方向に変わっていったんでしょうね[にこにこ]

70代以上  大阪府

2017/06/08 7:45

14.  >>13 [リボン][チューリップ]sakura[さくらんぼ][芽][演劇]さん
おはよう。

子供の頃の記憶だけはしっかり残っているんよ。

昨日読んだケアマネ研修のテキストは、まったく覚えてないけどね(笑)

あの頃の柔軟な脳ミソをまた手にできないものかねえ・・・

2017/06/08 7:41

13. ガロン おはよう~

そんな昔の話よく覚えてるね
しかも…………細々と

朝から胸が熱くなりました
ありがとう。

70代以上  大阪府

2017/06/08 7:12

12.  >>9 Augusutさん
おはよう。

もし拾われなければ、人間を恨んで絶望の中で息絶えてしまったんやろね。
そう考えたらあまりに心苦しく感じる・・・

最後に人の優しさに触れたこと。
これが救いになったと思うんや。

70代以上  大阪府

2017/06/08 7:10

11.  >>8 ⋈*.。結⋈*.。@お好きにどうぞwさん
おはよう。

ああ俺も思い出して日記にしながら、ケンさんやマメのことが頭に浮かんで、切なくなってしまったわ。

特に子供の頃の記憶って鮮明に残っているし。
やっぱり思い出って言うのは、大切な宝物だよね。
(^_^)

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