あの日の約束
30代前半  東京都
2019/05/04 21:37
あの日の約束
こんばんわ!そらです!
今日はお話を1つ紹介します。

都内に住む今どきの女性Mちゃんは23歳のOLです。そんなMちゃんの夢はワンちゃんや猫ちゃんの毛を切るトリマーになること。
それに向けて勉強中で仕事とプライベートと大忙しな毎日でしだが1つだけ楽しみがありました。
それは高校生の時から付き合ってる彼氏のS君と会う事。S君とは高校生の時にバスケ部とマネージャーの関係から恋に発展して付き合う事に、そして付き合って今年で6年目になります。S君の仕事は営業で忙しい毎日でした。お互いに休みの日に会うのが楽しみで時間があると寝る前に電話をしてお互いを励まし合って頑張ってきました。
そんなMちゃんはいつかS君と結婚する事を願っていました。
お互いに思いやる気持ちは出逢った時から変わらず周りからも羨ましがられる二人でした。
ある年のMちゃんの誕生日にS君がプレゼントしたのはトリマー用のハサミでした。
「これさえあればMは無敵だろ?夢を叶える為に側に居てやるから一緒に叶えよう!だから約束して、どんな事があっても必ず夢を叶えるって!」「うん!絶対に叶える!私たち二人だけの約束!」
MちゃんはS君もS君から貰ったハサミも大切な宝物でした。そしていつか必ず夢を叶えると誓った二人だけの約束。こんな幸せがずっとずっと続くと思っていました。しかし、別れは突然やってきます。Mちゃんがいつもと同じく仕事をしていると職場にMちゃんに用件がある電話がかかってきて電話に出ると警察からでした。その内容は仕事の最中に取引先の場所に向かう途中で歩道に突っ込んできた車に跳ねられてS君が亡くなった事の電話だったのです…。
突然の別れ…、それからのMちゃんは何に対しても気力が沸きません。S君のお葬式にも出ましたけど現実として受け入れられなくて、あの日から記憶があまり無い状態が続きました。
そんな脱け殻のような状態のまま現実から逃れたいと思い、気分転換にドライブをしようと車を走らせる事に。時間は明け方の5時前で薄明かりが射してる道路をあてもなくドライブをしていると目の前に大きな壁がありました。とっさにブレーキを踏んだのですが凄まじい音だけが聞こえてきて辺りは真っ暗になりました。
どれくらい時間が経ったのかは分かりませんが暗い場所にポツンと自分が佇んでいるような感覚でした。暫くすると目の前に1つの扉が現れました。その扉の前に歩いて行くと扉の横に綺麗な女性が立っていました。
「あの、ここはどこですか?」Mちゃんが聞くと女性が「あなたは今聖門の前に居ます。この扉の向こうは聖界です。」その女性曰く、この聖門を抜けて行くと死者が居る聖界へと行けると言うのです。女性はMちゃんのこれまでの半生を全て知っていました。「私は運転していて…確か事故をおこして…そこから気付いたらここに。」女性はMちゃんの後ろを指さしました。Mちゃんが振り返ると自分が病院で手術している場面が現れました。「あなたは今現世と聖界の間に居るのです。今からなら現世に戻る事が出来ますよ。」女性に言われて現世に戻ろうと思いましたがMちゃんは考えました。(このまま戻ってもあの傷だらけの状態じゃ辛い。それに毎日生きる希望も持てない現世に戻るならこのまま扉の向こうに行ってS君に会いたい。その方が寂しくないし幸せ。)Mちゃんは女性に聖界へ行く事を伝えました。すると大きな扉が開きました。(きっとこの先に進めばS君に会える!大好きでずっと一緒に居たい彼に会えるんだ!これからはずっとS君の側に居られるんだ。)そう思って扉に入ろうとした時、強い光りに包まれました。目をゆっくり開くと目の前に大きなスクリーンが現れ、映像が写し出されました。その映像は…。
子供の頃の自分です。初めての七五三での可愛い衣装の自分。幼稚園で必死に覚えたお遊戯を披露してる自分。初めての入学式でお気に入りだったピンクのランドセルを背負ってお爺ちゃんに写真を撮ってもらってる自分。そして両親が涙組みながら喜んでる卒業式。高校生になって初めて熱心に取り組んだバスケ部のマネージャー。そこで出逢ったS君との初めて会話した保健室での映像。それから一緒に帰って道草して食べたハンバーガー。夜抜け出して近くの公園のベンチに座ってS君と流れ星を探した日。初めての記念日にS君から貰った1つ300円のお揃いのペンダント。お互いに卒業して会う時間が少なくなるから始めた交換ノートを書く自分の姿。いつしかその交換ノートは5冊になっていたり。S君の初めての給料でコース料理を一緒に食べに行った事。Mちゃんの初めての給料に1つ1500円のペアネックレスのプレゼントに俺のペンダントより高い~と悔しそうなS君を見て大笑いした日。特に記念日でもない日だけど二人で夕暮れ時に近くの海までドライブして夕日と海を眺めながらお互いの将来の話しをした事…。そんな平凡だった毎日がとてもとても大切な毎日だったと感じました。
これまでの人生をスクリーンで見て涙が流れてきました。
Mちゃんは思いました。(あなたとの約束、必ず叶えるってあの日約束したもんね。気付かせてくれてありがとう。あなたとの6年間本当に幸せでした。いつの日かきっと、また会えるって信じてるから。本当にありがとう。)Mちゃんは聖界へ行くのをやめて、元の場所へ引き返そうとしました。するとその時光りが激しくなり気が付くと病院のベッドで寝ていました。
目の前には涙ぐんで喜んでる母親と父親、後からお医者さんに聞いたのですが5日間生死を彷徨っていたそうです。それからリハビリを行い奇跡的なスピードで回復して無事に退院して自宅に戻って来ました。不思議な体験をしてふと、部屋の片隅に忘れようとするかのように置かれた箱を開けるとS君から貰ったハサミが入って居ました。それを手に取った時に初めて気づきました。箱の底に紙が入っていて広げるとS君の手紙でした。
「M!頑張れー!どんな時でも俺は側に居るよ。二人だけの約束。忘れないで。Sより。」
それから3年、Mちゃんは忙しい毎日を送って居ました。ハサミを片手に握りしめて…。
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