ある税務調査(フィクション???・ノンフィクション???)
19××年某月
北国のS市K区
調査対象=ラブホテル経営会社H
Hの申告売上は、普段の車の出入りから推計して、4割程過少と判断されていた。
某月18時30分
山本は先輩の田原と共にとある駐車場に車を停めた。
田原は、山本にメモするよう伝え、一点を見ながら読み上げた。
「18時43分、6969入り」
「19時02分、8677入り」
「19時11分、4092入り」
…
…
…
「20時40分、6969出」
「20時51分、4092出」
「21時57分、8677出」
これは、ラブホテルに出入りした車の記録であった。
それから数日後の午前10時
山本と田原は、H社の事務所に居た。
「社長さん、○月×日の入出記録と売上記録テープ、売上台帳を出して下さい。」
二人は、数日前の自分達の入出記録とH社の入出記録を突合していった。
山本が田原に小さい声で囁いた。
「これ、無いです。それと、これは延長分が計上されてません。」
突合の結果、その日の18時30分~ 22時30分までの4時間 だけで、3万6000円の売上誤差(過少)が認められた。
田原は、社長に個人預金の提示を求め、入出金を確認したが、疑問点は認められなかった。
(社長から提出のあった個人預金は、D銀行とH銀行の2行)
山本は、数日前にS信金の渉外担当者がH社の事務所に出入りしていたことを把握していた。
(S信金は、H社の公表金融機関には載っていなかった。)
その日の調査で、二人が把握したことがもう一点あった。
それは、ホテルのリネン室から渡り廊下で繋がった建物に、2台の大型洗濯乾燥機が設置されていたことであった。
(H社の減価償却資産には載っていない機械であった。)
翌日、山本と田原は、S信金に向かった。
支店長に、H社の社長及びその家族名義の預金内容の提示を求め、内容確認を行ったところ、妻名義の普通預金にほぼ毎日5~8万円の入金があることを確認した。
後日、二人は再度H社を訪問し、疑問点・確認した売上誤差等を社長に伝え、厳しく問いただしたところ、社長は売上の一部を除外していたことを認めた。
H社の脱税の内容
日々の売上の一部を計上しないで、
その金額分を妻名義の普通預金に入金し、海外旅行や貴金属、遊興費に充てていた。
洗濯業者に依頼しているシーツ枚数からの売上推計を逃れるために、大型洗濯乾燥機を2台購入(帳簿外)し、約3割のシーツ類を自社で洗濯していた。