最近、通いはじめた喫茶店がある。
少し変わったコンセプトの喫茶店で、個人経営だけど、深夜でもやっている。
割と新しいお店で、まだ知っている人も少ない。


夜に美味しいコーヒーが飲みたいなと思った時や、本を読んだり、なんとなくぼーっと時間を過ごしたいなと思った時に店に行く。
その日も、美味しいコーヒー飲みながら、本でも読みたいなと思って、お店に向かった。


自分の他には、お客が数人。
勉強している人もいれば、話し合っている人もいる。

適度に静かな店内。
照明のほのかな薄暗さが、なんとも心地が良い。
この雰囲気が好きだなぁ。
そんなことを思いながら、カウンターでコーヒーをすすりつつ、本を読んでいた。


コーヒーが半分になった辺りで、新たな来客。
30代半ばくらいの女性。

その女性が席に着くと、注文を頼みがてら、お店のマスターと談笑し始めた。
どうやら、新しいメニューの話で盛り上がっているみたいだ。

メニューを見ることなく注文されていたし、常連さんなんだろうか。
そう思いながら、本へと注意を戻し、続きを読み進めようとした。

そのとき、急にマスターがこちらを向いて一言。


「そういえば、こちらの方も同じですよ。」


思わぬキラーパスに、きょとんとした顔でマスターと女性の方を見る。
しかも、「同じ」って何のことだろう。
ちっとも検討がつかない。


マスターは、「職場が同じということです」と続けた。
なるほど、そういうことか。
ちょうど仕事の話でもしていたのだろうか。
たしかに、以前お店でマスターと話をしていた時、仕事や会社について話した記憶がある。

にしても、まさか、まだ知っている人が少なそうなこの店で、同じ職場の方にお会いするとは。
なんてことを思いながら、マスターと女性との会話に混ざっていった。


その女性と話してみたが、たしかに同じ会社の社員だった。
しかし、そもそも普段仕事をするビルすら違う。
普通に仕事を続けているだけでは、確実に知り合うこともなかっただろう。

そんな、名前も知らない人と、この喫茶店で世間話をするなんて。
話を振られるまで、ちっとも思いもしなかった。

偶然な出会い。
話を振ってくれたマスターに感謝。


しかし、日常にも、案外面白い事が転がっているものだなぁと思った。