レス自体が問題なわけではない。
お互いに性的な欲求や関心が低いならレスでも何ら問題はないし、むしろレスこそが夫婦円満の秘訣にもなり得る。
あるいは、欲求はあるけど配偶者をその対象と見なせない、というケースでも、お互い様なら問題ない。
うちはたぶん妻が前者で自分は後者、動機は異なるものの行き着く結果は同じで、だからこそ15年ほどのレスでもそのままの関係性が続いているのだろう。

最初のうちこそ、あからさまな嫌悪感を伴った強い口調での拒絶に、まるで人としての尊厳そのものを否定されているような想いもあったけれど、妻にしてみればそんなつもりで拒否していたわけじゃないだろうし、むしろ嫌なことを求められることこそ尊厳の否定だと、自分とは真逆の方向で同じような想いをさせてしまっていたかもしれない。

結婚前はデートのたびに毎回してたし、一緒に暮らすようになってからも数日おきにはしてたから、もともと相性が悪かったわけではないと思う。
だけど夫婦を取り巻く環境は常に変化するもので、環境が変われば気持ちだって変わるし、加齢とか妊娠とかホルモンバランスとかで体調も変わるし、精神や肉体に変化があれば欲求や感情が変わるのも当然のことだろう。
変わらないものなど何もないと、諸行無常が自然の摂理で、別に誰が悪いわけでもないし、どっちのせいでもなく、受け入れるより仕方がない現実と思う。

受け入れた上でどう対処するかが、レスにまつわる本当の問題かと。
でも「自分ですれば？」というのは欲求の正体を根本的に見誤っている。
相手のある行為と自己完結する行為は、そもそも全く異質なもので、補完できるわけがない。
単に溜まったものを排泄するだけなら自己処理でいいけど、相手との関係に求めたいのは文字通りの愛し合う行為なわけで、身体だけじゃない気持ちの一体感も感じたいし、むしろ排泄なんてどうでもよくて、そうした欲求を自己処理することなんて絶対不可能なわけで。

「別れれば？」という考えもある。
離婚原因でよく言う「性格の不一致」には、おそらく「性の不一致」も多く含まれてるはずで。
ただ、現実には完全一致があり得ないことを知ってるし、どこまで妥協して不一致を受け入れられるかだけど、とりあえずレスは受け入れることにしたのなら、それを理由に別れることはない。

結局は家庭の外で上手く対処するしかないんだと思う。
絶対にバレないクレバーさとか、都合をつける調整力とか、家計に影響させない経済力とか、それとたぶん一番大事なのが、後ろめたさを伴う偽りの関係だからこそ、相手に対する偽りのない誠実さとか、いくつか最低限のハードルはクリアできなきゃダメだけど、その上であくまで自己責任で楽しむ分には、まぁいいでしょうと。

正当化と言われれば、それまでですが。