形見のズボン
60代前半  静岡県
2018/02/26 23:40
形見のズボン

私は、形見の紺のズボンを穿(は)く度に

従妹の婿に入ったY君の明るい笑顔を

思い出す。でも次第に一緒に暮らす妻や

子供、そして舅と上手くいかなくなった。

そして従妹の妻と離婚をしたと風の便りに

聞いた。

それからしばらくしてY君は病で亡く

なったらしい。

50才前後だった。

二人に間に娘二人がいたが、既に娘達は社会人と

なっていた。

何時の間に夫婦の歯車が、同じ屋根の下で暮らして

いて狂い始めたのであろうか?

Y君が婿に入った頃の、初々しく笑顔が可愛らしく

今も私の脳裏に鮮明に焼き付いている。

数年前 伯父(舅)から「Y君のズボンが3本程

あるが、良かったら穿(は)いてくれ」と言われた。

Y君の体型は私より少し身長が低く

合うかどうかなと思ったが、ピッタリサイズであった。

だから、形見のズボンを穿くと、Y君が私にいつも一緒に

行動しているような気になる。

Y君、何時も私をしっかり見守ってね。

Y君がいなくなって早いもので10年の

歳月が過ぎた。
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