旅立ち
二三日前、朝から雨降りだった。
部屋から外を眺めても鉛色の厚い雲。
しとしとと音も立てずに雨が降っていた。
しばらくすると、何やら小鳥の声が。
その方を眺めると、ベランダの手すりに
小鳥がちょこんと立っている。
雨に小鳥の羽が濡れている。
よく見ると、どうも巣立ったばかりの
小鳥のようだ。
そこに親鳥が何か口にくわえて、ベラン
ダに何とか立っている小鳥に口移しで
餌を与えている。
こんな日に巣立ちなんて、なんて最悪の
旅立ちだろう。この小鳥に何て峻厳なス
タートを神様は与えたんだろう。
これからは、この小鳥は一人で生きて
行かなきゃいけない。天敵からも身を
守らなきゃならない。厳しい現実が
待ち受けている。
ちゃんとベランダの手すりからふんを
下に落としている。
しばらく手すりに佇み、意を決して、
雨の中をどこかへ飛び立った小鳥。
厳しい生存競争に打ち勝って、
無事生き伸びてくれよ。