突然の電話
ミレニアムの頃、まだ携帯電話も個人で持つ人は少なかった。
私は、ある女性と掲示板で知り合った。
いわゆるメル友である。
その当時、サイト内でなくお互いのメルアド宛てにメール交換
をしたような記憶がある。
私はその当時40代、会社の仕事で現地に長期で逗留すること
もあった。その女性は、同じく40代のバツイチ女性。何か二
人の波長があったか、遠距離ではあるが毎日のようにメールを
交換した。
逗留先は東海村に近い場所であったが、何せメールを送るには
公衆電話のモデム差込口にノートPCのモデムケーブルを接続し
自分のメールをダウンロードしたり、あらかじめ作成したメー
ルを送信したりするのに、手間がかかった。無線局の設置も、
wifiのサービスもまだ始まっていない時代。私のようなことを
する会社員は、駅の構内でもよく見かけた。
私は、出張先でも彼女に毎日せっせとメールを書いた。
彼女もそれに対し、日をおかず同じテーマ或いは別の
テーマで自分の考え方、気持ちなどを書いてきた。
そんな時、仕事が終わって旅館に帰って部屋でくつろ
いでいると、旅館の女将さんから内線電話がかかってきた。
「女性から電話です。」と。
そのまま待っていると、聞こえてきたのは、聞き覚えのない
女性の声。「○○さんですか?私、メル友のXXです。」と。
この時は、本当にびっくりした。まさかという驚がく。
彼女の住まいは北九州市。
この辺りに旅館は、10数軒あるが、きっと手当り次第、いわ
ゆるローラ作戦で私が宿泊している旅館をNTTの106番あ
たりで聞いて、探し出したと思う。
彼女にそのことを電話で聞いたらその通りだという。
私は、彼女の執念とも情熱とも思われるひたむきさに脱帽、感
謝。とても愛おしく感じた。電話をかけてきた理由は、メール
の向うにいる私の実在する証を声で確かめたかったらしい。
彼女と付き合った期間は、2年位だったかな。
しかしあることで、いさかいとなり修復ができないまま
終焉を迎えた。
彼女を芸能人で言うならば、女優 星百合子似かな。
大人のほろ苦い経験であった。
END