短剣の舞
60代前半  静岡県
2016/10/28 11:19
短剣の舞
「我々が耐えねばならないのは現在だけだけある。

過去も未来も我々を押しつぶすことはできない。

なぜなら、過去はもう存在しないし、未来はまだ

存在しないのだから。」

それはとにかくほんとうである。

過去と未来が存在するするのは、ただ我々がそれらを

考える時だけである。過去も未来も人間の臆見(おっけん)で

あって、事実でない。我々は自分で自分をさんざん苦しめて

悔恨や不安をこしらえているのだ。

僕はたくさんの短剣をつぎつぎとつなぎ合わせていく曲芸師を

みたことがある。それはまるでぞっとする木のようなもので

曲芸師はそれを自分の額の上にのせて、バランスをとっていた

のだ。それと同じように、我々は自分の悔恨や不安をつぎつぎ

と加えてもっている軽率なアーチストなのだ。(中略)

足の痛いある人は、昨日も痛かったことを考える。かつても

痛かったことを思い出し、明日も痛いだろうと考える。ここでは

知恵は大した役に立たないのは明らかだ。なぜなら、今おそって

いる苦しみを消し去ることはいつだってできないからだ。しかし

精神の悩みである場合には、過去の後悔と未来の恐怖とかがなお

れば、まだ残っているものがあるだろうか。(中略)

そんな風に自分を苦しめている全ての人に、ぼくは言いたい。

現在のことを考えよ、と。今一刻また一刻と継続している

君の生を考えよ、と。この一分の後には必ず次の一分がやって

くる。したがって、君が現に生きているのだから、今生きてい

るように生きていくことは可能なのだ。未来のことがこわい

だって?君は自分の知らないことを語っているのだ。出来事と

いうのは、我々の期待通りには絶対行かないものだ。君の苦痛

については、まさに今苦痛は大変ひどいものであるがゆえに、

必ず軽くなるだろうと言うことができるのだ。全てのことが変

わり、全てのものが過ぎ去る。




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幸福論 アラン著より
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