人生は、ぶっつけ本番
「人生とは稽古する時間もなしに、我々が役割を
演じなければならない芝居だ」
バシル・ホール・チェンバレン(注)が言った言葉。
だいたい生まれ落ちた時からそうだ。
女役をやりたかったの、親不孝の役をやりたかったの、
つべこべ注文するわけにはいかない。
いきなり「ハイ本番」だ。
年頃になれば初恋だ。いつどうやってキスをするのか
わからない。またキスされたらどうしたものかもわからない。
小粋なフランス映画などを頭に浮かべて見るが、あれはちゃんと
初めから演出が行き届いているんだ。
素人はああうまくはいかない。それから、就職、結婚、出産ーー
重大な事件はすべてぶっつけ本番なのだ。
(注)イギリスの日本学者。明治初期に来日し、日本
文化に親しみ、海外に紹介すると同時に欧米の
言語学を紹介した。