形見のズボン
私のいとこである娘の婿養子で入った○○君が何年か前
離婚した。二人の間に出来た娘達も社会人となっておった。
私は帰省して初めて知ったし、その後彼の動向は知らなかった。
しかし亡くなったらしい。年は、私より少しばかり下だった。
伯父は90才を越えるが、かくしゃくとしている。
ただ耳が遠いのが、難点である。
その伯父が、私に亡くなった婿のズボンを一着 奥から
出して来て、婿が亡くなったから、このズボン良かったら
「マサ、もらってくれんか」と言われた。
彼の体型と私の体型は、よく似ていて、少し彼の方が
背が小さいくらいだった。
私は、試着してみて、腰回り、裾丈もぴったりして
履けそうだと伯父に答えた。それで、もらった紺のズボン
が三着。それを代わりばんこにほとんど毎日のように
穿いている。若く逝ってしまった彼の形見として
婿養子に入った若い頃の愛くるしい笑顔を想い出しながら
穿いている。
合掌