私は身だしなみに無頓着だ。

シャンプーが切れてても石鹸で頭を洗ったりする。逆もまた然り。妻から
「ゴメンね。最近ボディソープ買いに行くの忘れてて。」
と言われても
「いいよ。もうすっかり慣れたよ。」
とおおらかに受け止められる。


妻が風呂からあがったのは午後7時を過ぎた頃だった。
我が家には最後に風呂を使用した者が掃除をすると言うルールがあり、いつも忙しそうにしている妻にせめてもの償いに、私が大抵最後に入浴している。

普段目にしないものを見つけたのは脱衣所で服を脱いでいる時だった。シャンプー、コンディショナーに並んで見慣れないボトルが立っている。妻に聞くと
「今日行った美容室から試供品のシャンプーを頂いたの。私は肌が弱いから、アナタが使ってみて。」
とその未知のボトルを手渡しして来た。

何を使おうが気にしない私は、早速そのシャンプーを使ってみた。すぐに懐かしい爽快感が頭に訪れた。

トニックシャンプーだ。

学生時代に寮生活を送っていた私は、友人が使っていたトニックシャンプーを借りてみた事があった。お湯を頭からかぶっているのに、不思議な清涼感がある。なんとも不思議な心持ちになった事を覚えている。

思い出と違うのは、清涼感が強いと言う事だった。頭が寒いくらいに冷え冷えとする。
最近の猛暑を考えると、これくらい涼しいのがちょうどいいかも知れない。
毎日使おうかな、そう思いながら頭をすすぎ始めた。