真夏日の黄昏時(たそがれどき)・・・
強烈な西日が部室の明暗を色濃くわけていた。
そんな目立たない片隅に・・・
クロッキがちびちびと
ワンカップ大関をすすっている姿があった。
暗陰(くらがり)からクロッキの白い前歯がチラッとみえたような。
僕はなぜか背筋がプルッとした。
「おぃ?クロッキやんか?
どないしたん?ビックリするやろ?
こんな暗いところで・・・」
声を懸けると
今度こそ確実に白い歯を見せてくれた。
黙って新しいカップ大関をだして
僕の目の前に置いてくれた。
「あっ?いや。
僕、呑めんから・・・
ええわ。
」
するとクロツキは残念そうに深いため息をついて・・・
一言ボソッとこう言った。
「眉毛が・・・」(ションボリ)
そう言ってすぐに押し黙った。
うっる?
僕には残念ながら・・・
その意味がわかった。
それはつい最近の出来事であった。
クロッキが片思いしている一つ上のチエ先輩が・・・
失恋をして
ある日いきなりまゆげをすべてそり落として現れたのだった。
あまりの変貌に
みんな見て見ぬふりをして知らん顔をしていたのだが。
もともとみんなに好かれていない女性だったので・・・
特にキザ男などは、
いい気味やといわんばかりに後ろ指をさしていたくらいだったのだ。
女性部員のあこがれの的だった先輩をものにしたつもりが、
いいように弄ばれて・・・
ポイされたというわけだ。
鼻持ちならない彼女の変貌ぶりではあったが・・・
そのことで・・・
たつたひとりクロッキだけが
落ち込んでいるようだった。
クロッキは
寝ても覚めてもチエ先輩のことを好きだったから・・・仕方ない。
とはいっても
100%以上宇宙がまっぷたつにわかれてもあり得ないほどの片思いであった。
そもそも俗物のかたまりであるチエ先輩にとつては・・・
クロッキなど塵芥(ちりあくた)にも満たない存在なのであったのだ。
(ごめんね。酷い言い方で。)
僕は知っていた。
クロッキはいつもチエ先輩を熱く見つめているのを・・。
でもクロッキの瞳は
ほんとに米粒のように小さな瞳だから・・・
きっと僕以外は誰もそのことに気づいていないにちがいなかった。。
といっても僕はむしろ
その方がいいやと思っていた。
暫く会っていなかったが・・・
クロッキの悲しそうな静まりようで、
すぐに察しがついた。
クロッキが相当落ちこんでいる。
「そっか?眉毛か?」
僕は奴の前に腰掛けて
クロッキがさしだしたワンカップ大関を呑むことにした。・・・
ふと机の下をみると・・・
すでにカップが4~5本ころがっている。
クロッキ。。。元気だせよ。
・・・・つづく
コメント
2011/07/15 21:14
2. ホンマに短編なのかい
返コメ
2011/07/15 21:06
1. サークル内恋愛のこじれですか
妥協とか折り合いをつけるなんて考えはなかったのでしょうね
返コメ