記憶が途切れた日､

それは構内の渡り廊下に張り出された掲示板を見ているときだった｡

顔見知りのｸﾛｯｷと同郷の人達が､

ひそひそと信じられないようなことを話ていたのだ｡

僕は自分の耳を疑った｡

ｸﾛｯｷが･･･
岡山の自分の部屋で･･･
首を吊って死んだ？
というものだった｡

それを聞いて僕は凍り付いてしまった｡

そのまま通路の壁まで吹き飛ばすされて粉々に砕けそうになっていた｡

実は･･･

このﾀｲﾐﾝｸﾞで考えるべきではないのだが･･･

この日は学園祭で
ｱﾝﾊﾟﾝ達がおうどん屋さんを始める予定だったので､

僕はひとしきりお腹をすかせており､

うどんのただ食いができると浮かれていたのだった｡

そんなくったくのない流れでとびこんできたｸﾛｯｷの悲報･･･

僕のお腹に増幅してずっしりこたえた｡

それどころじゃないのに･･･腹はへっるばかりなのだ｡

ああ､僕って奴は･･･
ﾚ･ﾐｾﾞﾗﾌﾞﾙ

なんてったって､しかたないじゃん｡

どうにか出来るわけでもないし･･･

僕は切り替えてあんぱん達のおうどん屋さんにいくことにした｡

ｷｬﾝﾊﾟｽの空き地に

にわか作りの掘っ立て小屋｡

ﾋﾞｰﾙのｹｰｽを椅子にして､

可愛いうどん屋さんであった｡

そう｡

僕は気持ちを切り替えてお店の裏にまわった｡

すると･･･

どうしたんだろう？

あんぱん達がしゃがみこんで､

静まりかえっていたのだ｡

ｸﾛｯｷの悲報が彼女たちにも伝わっていた｡

えっ？
でもなんで？
彼女たちになんの関係があるんや？

６人のﾒﾝﾊﾞｰの内一人はしくしく泣いているではないか｡

訝（いぶか）しげに戸惑う僕の手を引いて･･･たまりかねた

あんぱんが僕を引っ張り出した･･･

そして事の経緯（いきさつ）をきかせてくれた｡

それは僕が一番きらいな話だと彼女も解っていたようだ｡

･･･　････

それは･･･････

あんぱんを含めｸﾗｽの女の子全員にﾗﾌﾞﾚﾀｰを送っていたというはなしだった｡

えっ？
だれが？

僕は聞き返した｡

あんぱん
｢ｸﾛｯｷさんやんか｡
私ももらった｡ﾗﾌﾞﾚﾀｰやったわ｡｣

みんな知ってる｡

僕以外の殆どの人が､､､

そんな彼をｵﾓｼﾛおかしく取りざたにして･･･

ｱﾝﾊﾟﾝの友達の中にもｸﾛｯｷにひどいことを言った娘がいたらしいのだ｡

その時僕の頭の中には･･･

ｸﾛｯｷが小さな声で泣いている姿が･･･

何重にもにもかさなっておしよせていた｡

｢それで？
お前らどないしたんや？｣

自分でもなにを言っているのか解らなくなっていた｡

だからといって彼女たちが悪いわけでもないのに･･･

むしろ､

異変にうすうすきづきながら深入りをさけていた自分に腹が立って･･･

しかたなかったのだ｡

ｸﾛｯｷが急に朗らかになって･･･
度が過ぎて？
握手までしてきた時に､

僕はからかうように

｢おぃおぃ？
ｱﾒﾘｶ人やないんやからぁ～～～｡きしょくわるいやん｡｣

などとちゃかしていた｡

きっと僕も一杯引き金を引いていたに違いない｡


･･･

その夜､
やはりお腹ｶﾞﾍﾟｺﾍﾟｺで･･･
僕は彼女たちと一緒に残り物のうどんを食べた｡

ｸﾛｯｷの塩辛い味だった｡

ｸﾛｯｷの自殺の理由が本当はなにだったのか？

わからない｡

ただ､
彼が閉ざされた苦悩の中から必死に抜け出そうとしていた｡

そんな彼の姿が･･･
僕の記憶の中にはいまもはっきり残っている｡

しつこい僕は今も君のことをわすれてないよ｡






おやすみ
ｸﾛｯｷ｡