女性は重々しく立ち上がって､

取り出した婚姻届を開いて僕に見せた｡

四つ折りにしていたはずなのだが折り目の跡が付いていない｡｡｡｡

きっと丁寧にふんわりとたたんであったのだろう｡

････

なぜだろう｡

僕はそれを見て･･･

えもいえず切なくなっていた｡

出たっきり帰ってこないお腹の子の父親が､

ゆるせないのか？

にくいのか？

きつくなじりながらすがる思いをのこしているのか？？？？

しわ一つ無いその婚姻届には･･･

たしかに彼の署名捺印がかかれていた｡

それは彼らしい神経質そうな書体であるが､

やはり婿養子に入った名字のままだった｡

女性はその署名の部分を強調した｡

（籍をちゃんとしてくれなくて･･･

これじゃ･･･どこのだれだか怖くて･･･

本籍もわからないまま信用できなくて･･･）

女性が母親から言われていたことや､

彼女自身の心の叫びが･･･

小さなつぶやきになってこもれ出していた｡

果たして彼はこの紙切れでなにをしたかったのだろう？

そして今､､､

彼女にとってこの紙切れはなにを意味しているのだろう｡

身重の女性が･･･目の前で･･･

行き場のない袋小路で立ち止まっている｡｡｡｡｡｡｡｡｡｡








････つづく