事ここに至って･･･

この体たらくは

どのように言いつくろってみても

こんな男の壱分などありはしない｡

ただ･･･

僕の脳裏には

これまで彼が彼女に対してとても献身的だった印象が･･･

ぬぐいきれない｡

僕は彼から聞いていた彼の生い立ちと

名古屋での哀しい出来事を何度も頭の中で反芻していた｡

･･･

彼の父親は可成りのﾌﾟﾚｲﾎﾞｰｲだった

あちらこちらに子を造り､

彼自身は幼少時代を施設に放置されていたという｡

そして父親が迎えに来る頃には､

夏の甲子園に出場が決まっていた｡

彼はまだ一年生だったが･･･

ﾋﾟｯﾁｬｰとして期待されていた｡

･･･が､

無理投げがたたり肩をこわしてしまったのだ｡

特待ではいっていた彼は高校をそのまま中退したという｡（運のない奴）

そして名古屋に出てきて､

大型ﾄﾗﾂｸの運転手としてはたらくことになった｡

その折りにとある材木店の娘さんといっしょになり､

婿養子としてお店をつぐことになったらしい｡･･･

･･･が､

結婚まもなく奥さんが･･･

脳腫瘍で･･･

ともに闘病生活がはじまった｡

すべてが闘病のために費やされ･･･

仕事もやめて彼女の田舎に転地療養のために都落ち･･･（途方にくれて･･･）

奥さんは若くして癌の進行も早く､

看病の甲斐もなくさきだった｡（運のない奴）



つくりばなしにしても･･･

よくできたは話だった｡

もっとも･･･それがなんだって関係ない｡

この信じがたい逃避行が､

彼のすべてを否定しているのだから｡






････つづく