拝啓 雌豚様-4-
そんなゆきが物心ついた頃だった。
父親が肌身離さずも持っていた携帯電話をみつけた。
それはゆきが知る限りめったに見かけない
2つあるうちのひとつであった。
ひとつはホテルマンの仕事関係用なのは知っていた。
ゆきにしてみればそこに
ゆきの知らないもう一人の父親がころがっているようにさえ思えた。
ほとんど自分をかまってくれることもない父親が
希に唯一リラツクスして無邪気にいじくっている携帯だった。
それを手に取ったゆきの鼓動が高鳴る。(ドックンドツクン)
アドレス・・・
送着信履歴
そしてメール履歴・・・・
なんとなく察してはいたがまさか
そのなかにはまぎれもなく
オンナの匂いがあふれかえっていた。
その時
それまでむしろ空っぽだったゆきの心の中に
たとえようのない寂しさが
ふくれ始めていた。
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