ラブホ徒然日記～いつもの光景

「早くぅ～
固定してぇ～」

シーツを捩（よじ）りながら
彼女が呻（うめ）く。

聞き慣れない言葉が
僕の耳元を過（よぎ）りました。

「えっ？」
（固定してぇ～っ）て？

どゆ意味かは
だいたいわかるけど。。。

それは
沈黙のリップサービスをしていると
彼女が身を浮かして
自分でも不意に
口走ったようでした。

確かに
シンプルな呪文に違いなく

僕も思わず

（固定します！）

と頭の中で応答しながら
腰を落としました。

すると彼女も

二酸化炭素をすべて吐き出すように

深く
「ぅ～～～」（それでいいのよ）

って言ったような
やはりシンプルな
原始用語が返ってきました。

なるほどこれが
数年間ぶれのない関係で
導かれ培われてきた
男女の機微ってやつなのでしょうか～

ここですね。

歳の差も立場の違いも
すべて払拭して埋没できる一瞬です。

この一瞬に
僕は目を見開き
若く透き通るような彼女の横顔を
申し訳ない気持ちで
盗み見ます。

自分で言うのもなんですが・・・
正直なところ

なんで
こんな若くて綺麗な娘が

僕のような
冴えないおっさんに
寄っ掛かってくれてるのか

よく
わかりません。

せめて
髯を小まめに剃って
洗顔マッサージをし
顔面体操などやって

近頃
男性用美肌ローションが欲しい
なんて本気で思うようになりました。

お陰で今なら
美に拘り
より綺麗になりたいという
女性の気持ちが
よくわかるようになりました。

もちろん
それで多少染みが薄らいだところで
彼女にとっての僕の立ち位置が
どうなるものでもないのですが・・・

こんなわけで
僕は
最近殊更に
見てくれの若さとスタイルを
気にかけるように
なりました。

というか
お付き合いするなら
年相応の熟女か
見た目もっと地味な淑女にした方が

楽なのかもって
思えてきました。

そんな
日々自信を喪失するばかりの

ラブホの徒然～

なんですよ。

う～(*´ω｀*)