ラブホの一丁目～奈良の女は離れない

女は備え付けのスリッパを
力一杯投げつけて怒鳴った

「私なんか消えたらええんやろ！」

まるで幼児のように
顔をボロボロにして
女は泣きじゃくっていた。

スリッパが
ジーンズを履いて
ベルトを締めようとしていた手に

当たった。

えっ？

それまで強がっていた筈の女が
どなり散らしたあと
あっという間に萎れていく。

おい？

そこからは
女はドライフラワーのようになって
突っ立っていた。・・・・

そんな時間が
幾度となく男と女を襲った。

その度に
もともとあったギヤップが
埋まっていった。

ほぼ６年の間

それはいくら刈っても根の絶えない
雑草のような関係になるための
儀式だったのかもしれない。

そして
2016年１月８日午後３時
仕事におわれている最中だった。

１ヶ月振りに
奈良の女からのラインが鳴いた。

ぴゅー♪

「お正月どうやったん？」

相変わらずの
ハルシオンから
一瞬にして目覚めたような
ラインだった。

だから返信はいつも

「おはよう(^^)」から始まる。

男は仕事の合間合間をぬって
ラインを開く。

どのタイミングで会おうと言い出すのか
概ね見当がついていた。

男にしてもやり取りしていくうちに
女の薫りを甦らせている自分と
向き合っていた。

結局
男は根負けする。

男
「今日は、暇なんか？」←あっ？

女
「今から会う～？」←あっあっ？

女
「何時ごろこれるぅ～？」←あっあっあっ？

何て言いながら
男のほうこそその気になっていた。

どうあがいても
奈良の女ほど甘美な蜜壷はない。

その、時点で
男は脳裏で女を抱いてしまっていた。

う～(´・ω・`)