寒いのが
いやや！

髭のチクチクが
いやや！

煮えきらないのは
いやや！

身体に汗を落としちゃ
いや！

いちゃいちゃするのも
いやや！

耳はやめて！
乳首ばっか攻めないで！
股関節が弱いから脚を広げすぎないで！
生理的に無理な男は無理！

ずいぶん潔癖気味で
五月蠅い尼崎の女だ

なのに
よくもまあ
こんなおっさんと長々と
付き合ってるもんだ。

そんなおんなも
何をしても良くなる瞬間が
あの刹那の数分だ。

魔法の小瓶が
沁々とシーツを濡らす。

喘ぎの鼓動に支配される時
女の臍に男の白いため息が満たされる。

強く隆起した腹筋の稜線に阻まれて
流れ出せずにわだかまる。

男がいたたまれずに揺さぶると

「動いたら溢れるからあかん！」

女が恐れるのは
過敏になって横腹を
伝い流れる感触だった。

そして
男は女の体が緩むまで
呼吸を限界まで止めることになる。

それが女に対する
ギリギリの礼儀でもあった。。。

そんな風にして
尼崎で始まった行進曲は
おんなが眠りにつくまで
海猫のように鳴りやまない。


臍の海。